ベンチャー企業と個人投資家の救世主、エンジェル税制とは?

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エンジェル税制 

目次

エンジェル税制とは

皆さんは「エンジェル税制」とう言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ここでいう「エンジェル」とは、創業間もないベンチャー企業に対し投資する個人のことを指します。
もちろん、エンジェルとなるのに資格などは必要なく、ベンチャー企業に投資する個人であれば誰でもエンジェルと呼ばれます。
エンジェルという用語は、英国で演劇事業に資金供給する富裕な個人を表現した言葉に由来するらしいのですが、資金に乏しいベンチャー企業にとって、投資をしてくれる人はまさに「天使」といえる存在でしょう。

そして「エンジェル税制」とは、ベンチャー企業への投資を促進するために、エンジェルに対して税制上の優遇措置を行う制度です。
税制面から個人投資家を支援すれば、彼らが積極的にベンチャー企業へ投資するようになり、それによって起業が促進されたり生まれて間もないベンチャー企業を支える環境ができ、我が国の産業の新陳代謝を促すことでイノベーションを促進し、国際的な競争力を増していこうという、風が吹けば桶屋が儲かる的な趣旨の制度なのです。

本稿ではこのエンジェル税制について、減税額はもちろん、手続きについても詳細に解説いたします。

エンジェル税制はエンジェルである個人投資家のための税制優遇ですが、その最終目的は起業支援でもありますので、別名「起業応援税制」と呼ばれたりします。
※ちなみに正式名称は「ベンチャー企業投資促進税制」と言います。しかし、世間的にはエンジェル税制で通っているようですので、本稿ではエンジェル税制で統一します。

さてさて、このエンジェル税制ですが、個人投資家がベンチャー企業へ投資を行った投資時点と、ベンチャー企業の株式を売却した売却時点の2つの時点で税務上の優遇措置を受けることができますので、まずはそれぞれの優遇措置をみていきましょう。

 

ベンチャー企業へ投資した時の税制優遇

まずは、投資時点での優遇措置です。
投資時点の優遇措置には以下のAとBの2つの優遇措置があり、そのどちらかを選択することができます。
※なお、優遇措置Aは平成22年4月1日より寄附金控除が改正され、自己負担額が5,000円から2,000円に減額され、さらにお得な制度になりました。

優遇措置A
(ベンチャー企業への投資額-2,000円)をその年の総所得金額から控除
※控除対象となる投資額の上限は、総所得金額×40%と1,000万円のいずれか低い方。

優遇措置B
ベンチャー企業への投資額全額を、その年の他の株式譲渡益から控除
※控除対象となる投資額の上限なし

簡単に言えば、優遇措置Aは、株式の譲渡益に限らず、エンジェルが1年間に稼いだ全ての所得の合計からベンチャー企業への投資額のほぼすべてを控除することができるということですね。
「ほぼ」と言っているのは、2,000円は必ず自己負担しなければならないという点と、「総所得金額×40%と1,000万円のいずれか低い方」という控除限度額に引っかかる可能性があるためです。

一方、優遇措置Bはベンチャー企業以外の株式の譲渡益からベンチャー企業への投資額のまるまる全部を控除できます。
ですので、株式譲渡益がベンチャーへの投資額以上に発生している方は優遇措置Bを選択したほうが節税額が大きくなります。

このように優遇措置Aも優遇措置Bも非常に有利な節税制度となっているのですが、例えば、優遇措置Aの控除限度額に引っかかったり、もしくは優遇措置Bであっても投資時点で株式譲渡益がベンチャー投資額を下回っていたりすると、優遇措置の効果が薄れてしまいます。

そこで、エンジェル税制は投資時点だけでなく、もう一度税制優遇を受けられるチャンスを設けています。それが売却時点の優遇措置です。次節ではこの売却時点の優遇措置を見ていきましょう。

 

未上場ベンチャー企業株式の売却時点で損失が生じた場合の優遇措置

エンジェルの多くは、成功の約束されないベンチャー企業に対し、そのビジョンや社会的な意義に共感し、彼らと日本の未来のために投資しているものと思います。
しかしながら、ベンチャー企業は単に製品・サービスを売れば良いというわけではなく、新しい市場を切り拓き、自社の製品・サービスを啓蒙しながらビジネスをしていかなければならず、経営判断に役立つデータも存在しない場合が少なくありません。
ベンチャー企業はそういったリスクがあるにも関わらず、大きな志と野望を持って新しい製品・サービスを世に送り出そうとしています。そして彼らのチャレンジが、我々消費者の生活の質を向上させているのは皆さんも実感していることでしょう。
ですが、こういったリスクをベンチャー企業や彼らに投資するエンジェルだけに負担させていいのでしょうか?

エンジェル税制はこういったエンジェルが負担するリスクについても税制優遇の措置が取られています。
すなわち、エンジェルが未上場のベンチャー企業に投資し、仮にそのベンチャー企業が思うように成長せず、未上場ベンチャー企業株式の売却によって損失が生じたとしても、その損失を他の株式の譲渡益と相殺できるというものです。
また、その年に相殺しきれないほどの損失が生じた場合には、翌年以降3年にわたって他の株式譲渡益と相殺ができます。

なお、この売却時点の優遇措置は、投資時点で投資額について税制措置を受けている投資家に売却時点で二重に税制を優遇する趣旨ではありません。
したがって、売却時点の優遇措置によって他の株式の譲渡益と相殺できる損失というのは、以下の計算式で計算されます。

損失=(取得価額-投資時点での控除額)-売却額

通常の損失額の計算であれば、投資額、すなわち株式の取得価額から単純に売却価額を控除して求めるのですが、エンジェル税制の売却時点の優遇措置で用いられる損失を計算するときは、投資時点で所得から控除した金額を差し引いた後の取得価額から売却額を控除して計算します。
これにより、二重の税制優遇を防ぐことができると同時に、投資時点で十分な税制優遇を受けられなかった投資家の損失だけに税制優遇をつけることができるというわけです。

なお、ベンチャー企業が上場しないまま、破産、解散等をして株式の価値がなくなり、売却できなくなった場合にも、同様の税制優遇を受けることができます。

基本的に、この売却時点での優遇措置は損失が生じた場合のみに適用されるのですが、平成12年4月1日~平成20年4月30日までに取得した株式に限っては譲渡利益が発生した場合にも税制優遇があります。
しかし、本稿ではこの譲渡利益が発生した場合の税制優遇については、エンジェルの確定申告の際に必要な添付書類を紹介するに留めます。

 

ベンチャー企業への投資方法 3つのパターン

これまでの説明で、ベンチャー企業へ投資した場合には、大きな税制優遇を受けられることがお分かりいただいたと思います。
では、税制優遇を受けるために必要な手続きとは何なのでしょうか。

税制優遇を受けるために必要な手続きを確認する前に、エンジェル税制が想定している投資方法の区分についてみてみたいと思います。
エンジェル税制における投資方法については、以下の3つの方法が想定されています。

3つの投資方法
・直接投資
・認定投資事業有限責任組合を経由して投資
・証券会社を経由して投資

なぜここで投資方法の分類を確認したかというと、実は、それぞれの方法でエンジェル税制の確認申請の方法が異なるためです。
しかし、本稿ではベンチャー企業への投資として最もスタンダードだと考えられる、直接投資する方法のみを念頭に置き説明していきます。

※なお、民法組合や(「認定」でない)投資事業有限責任組合を経由した投資についても、直接投資と同様に本税制の対象となります。

※認定投資事業有限責任組合や証券会社を経由して投資する方法については、経済産業省のHPをご確認ください。
認定投資事業有限責任組合経由の投資はこちら。
証券会社経由の投資はこちら。

 

エンジェル税制の手続きの大まかな流れ-申請から確定申告まで

それでは早速手続きを見ていきましょう。
エンジェル税制は税制優遇を受けるエンジェルだけでなく、投資を受けるベンチャー企業側でも必要な手続きがありますので、各手順でエンジェルとベンチャー企業のどちらが行うべき手続きなのかを意識しながら、以下の各Stepを確認していきましょう。

Step.1 ベンチャー企業は、自社がエンジェル税制の対象企業であることを確認する

エンジェル税制を利用するためには、まず、ベンチャー企業が経済産業省へエンジェル税制適用対象企業であること、投資が行われたこと等の確認申請を行います。
申請を受けた経済産業省は、確認後、ベンチャー企業へ「確認書」を交付します。
なお、投資自体はこの確認前でも確認後でも受け付けることができます。

Step.2 ベンチャー企業は、確定申告に必要な書類をエンジェルに提出する

ベンチャー企業はStep.1で入手した確認書を投資家へ渡します。

Step.3 エンジェルは、確定申告をする

ベンチャー企業から入手したを確認書を確定申告の際に税務署へ提出して手続きが完了します。

エンジェル税制利用の大まかな流れはこの3Stepです。それでは各ステップを詳細に見ていきましょう。

 

Step.1ベンチャー企業は、自社がエンジェル税制の対象企業であることを確認する

ベンチャー企業は自社がエンジェル税制の対象企業であることを経済産業省へ確認します。

それではベンチャー企業が当制度の対象となる要件とは何でしょうか?
ベンチャー企業がエンジェル税制の対象となる要件は、投資時点において優遇措置Aと優遇措置Bのどちらを利用するかによって異なります。

また、売却した年に損失が生じた場合の減税措置は、優遇措置A、優遇措置Bの要件のいずれかを満たせば適用されます。

優遇措置A、優遇措置Bそれぞれの要件を説明していきます。
なお、ベンチャー企業要件を満たしているか否かは資金の払込期日時点で判定します。

ベンチャー企業側の要件

エンジェルが優遇措置を受けるためには、投資対象であるベンチャー企業が以下の要件を満たさなければなりません。
ベンチャー企業は要件を満たすことによって、エンジェルからの投資を受けやすくなるというわけです。
要件を満たすベンチャー企業を「対象企業」と呼びます。

優遇措置Aの対象となるベンチャー企業(Ⅰ.Ⅱ.のいずれかを満たす企業)

Ⅰ.創業(設立)3年未満の中小企業者であること
Ⅱ.下記の要件を満たすこと

優遇措置Aの要件

設立後、最初の事業年度を経過していない場合には、営業キャッシュフロー赤字の要件は不要ですが、最初の事業年度を経過している場合には、たとえ設立1年未満の企業であっても営業キャッシュフローが赤字という要件が必要ですのでご注意ください。

優遇措置Bの対象となるベンチャー企業(Ⅰ.Ⅱ.のいずれかを満たす企業)

Ⅰ.創業(設立)10年未満の中小企業者であること
Ⅱ.下記の要件を満たすこと

優遇措置Bの要件

優遇措置Aの要件と似ていますが、優遇措置Aに比べ対象期間が長くなり、「営業キャッシュ・フローが赤字」という要件がなくなっています。

優遇措置Aと優遇措置Bに共通する要件

さらにベンチャー企業は、優遇措置A、優遇措置B共通の要件として、以下のⅢ~Ⅴの要件を満たさなければなりません。

Ⅲ.大規模法人(資本金1億円超等)及び当該大規模法人と特殊な関係(子会社等)にある法人(以下「大規模法人グループ」という)の所有に属さないこと

バックに大企業が付いているようなベンチャー企業は対象外と言うことですね。

Ⅳ.未登録・未上場の株式会社で風俗営業等に該当する事業を行う会社でないこと

なぜか風俗営業等を行う会社は除かれています。具体的には、世間一般に風俗店と呼ばれているものに加えて、キャバクラ、ホストクラブ、ナイトクラブ、ダンスホール、麻雀屋、パチンコ店や一部のバー、メイド喫茶などが含まれます。

Ⅴ.外部(特定の株主グループ以外)からの投資を1/6以上取り入れている会社であること。ただし、発行済株式の総数の50%超を保有している株主グループがいる場合には、その株主グループの保有している株式の数だけで発行済株式の総数の5/6を超えなければ、Ⅴの要件を満たしたとみなす。

Ⅴについては少し説明が必要でしょう。

「特定の株主グループ」とは発行済株式の総数の30%以上を保有している株主グループ(個人とその親族等)を指します。
ベンチャー企業の場合、創業者とその親族が特定の株主グループとなることが多いと思います。
そして、創業したばかりのベンチャー企業の場合、「外部からの投資を1/6以上取り入れていること」という条件を満たせないことが多くあります。

例えば、Aさんとその妻a子さん、そしてその友人のBさん3人で会社を設立したとします。出資割合はAさんが40%、a子さんが20%、Bさんが40%だとします。

Aさんとa子さんは親族ですので、一緒の株主グループになり、Bさんは1人で株主グループとなります(1人でグループというのも変な話ですが)。
Aさんとa子さんの属する株主グループを「A株主グループ」、Bさんを「B株主グループ」と呼ぶこととします。

どちらのグループも30%以上を保有していますので、「特定の」株主グループとなります。
条件Vの前段では特定の株主グループ「以外」から投資をされていなければならないと言われていますので、このままだと対象外となってしまいますね。

そこで、こうした場合の救済策が「ただし」以下の文(但し書)です。
但し書では「ただし、発行済株式の総数の50%超を保有している株主グループがいる場合には、その株主グループの保有している株式の数だけで発行済株式の総数の5/6を超えなければ、Ⅴの要件を満たしたとみなす。」とあります。

先の例ではA株主グループが50%超を保有しており、保有割合は5/6(約83.3%)以下であるため、Vの要件を満たし、めでたしめでたしとなります。

実際に判定する場合には、この但し書の部分から検討していくと良いと思います。

すなわち、①まず50%超を保有する株主グループがいるかどうか判断して、②そのような株主グループがいる場合には、その株主グループの保有割合が83.3%を超えていないことを確認します(超えていなければ対象企業です)。
③一方で50%超を保有する株主グループがいない場合には、30%以上を保有する株主グループがいないか確認します(いなければ対象企業です)。
④30%以上を保有する株主グループがいる場合には、その30%以上を保有する「全ての」株主グループの合計保有割合が83.3%をこえていないか確認します(いなければ対象企業です)。

 

Step.2 ベンチャー企業は、確定申告に必要な書類をエンジェルに提出する

ベンチャー企業が対象要件を満たす場合、エンジェルは「確認書」をベンチャー企業から受け取ります。
これは、ベンチャー企業が確かにエンジェル税制の対象企業だということを示すもので、確定申告の際にも必要になりますので、大切に保管しておいてください。

しかし、エンジェル税制を利用するためにはベンチャー企業だけでなく、エンジェル側にも満たさなければならない要件があります。
それでは、エンジェル側の要件についても見ていきましょう。

エンジェル側の要件

エンジェル側の要件は、投資した年の減税措置(優遇措置AまたはB)、売却した年の減税措置ともに共通の要件です。

Ⅵ.金銭の払込により、対象となる企業の株式を取得していること

現物出資したり、誰かからもらった株式ではダメだということです。

Ⅶ.投資先ベンチャー企業が同族会社である場合には、持株割合が大きいものから第3位までの株主グループの持株割合を順に加算し、その割合が初めて50%超になる時における株主グループに属していないこと

「同族会社」とは、その会社の上位3位までの株主グループ(株主グループの考え方は条件Ⅴと同じで、個人とその親族等を指します)が、当該企業の株式等を50%超保有している会社を指します。

条件Ⅴの時の例で考えて見ましょう。
条件Ⅴでの出資割合はAさんが40%、a子さんが20%、Bさんが40%でした。

まず、同族会社かどうかの判定ですが、この会社にはA株主グループとB株主グループの2つの株主グループしかありません。上位2つの株主グループで100%保有ということですから、同族会社に該当します。
そして、この同族会社に全く関係ないCさんが投資する場合にはエンジェル税制の対象となります。

難しいのは、すでに株式を持っているAさんやBさんが投資をする場合です。

Bさんがこの同族会社に投資する場合を考えて見ましょう。
持株割合が大きいものから考えていって、50%超になるときというのはA株主グループ(60%)だけですね。BさんはA株主グループに属していませんので、エンジェル税制の対象となります。

一方でa子さんが投資する場合には、a子さんはA株主グループに属していますので、エンジェル税制の対象外となるわけです。

エンジェル側の要件は以上の2つです。
なお、ベンチャー企業要件と同じく、エンジェル側の要件についても資金の払込期日時点で要件を満たしているか否かが判断されます。

 

ベンチャー企業側の手続き:事前確認制度について

ベンチャー企業要件については上記のとおりですが、エンジェルとしては、投資前にベンチャー企業がエンジェル税制の対象か否かについて知りたいと思いますよね。
そこで、ベンチャー企業が資金調達前にエンジェル税制の対象であるという確認を受けておくことができる制度があります。

これが事前確認制度です。
これにより、ベンチャー企業はエンジェルに対してエンジェル税制適用企業であることを説明できますし、事前確認制度で確認を得たベンチャー企業は下のリンクのように経済産業省のHPに公表されますので、投資家からの投資促進も期待できます。
事前確認制度の概要および確認企業一覧

 

事前確認制度を利用する場合の申請手続きについて

さて、ではこの事前確認制度はどのように利用すれば良いのでしょうか?
以下に手順をまとめましたので、参考にしてください。

手続き① 事前確認の申請(エンジェル税制適用企業であることの確認)

事前確認に必要な書類は、以下のア~ケのどのパターンに該当するかによって変わります。

特に、「設立経過年数」と「要件」との組み合わせが、ベンチャー企業要件を判定した際の組み合わせと微妙に異なっていますので、ご注意下さい。
なお、要件の確認は事前確認の申請日時点でなされます。

事前確認申請の要件

上記の表でア~ケのどのパターンに該当するかがわかったら、次は下のパターン別必要書類の表に照らし合わせて、必要な書類を確認します。

事前確認必要書類

出典:経済産業省「エンジェル税制確認申請の手引き」より

 

○が付いている書類が事前確認申請で必要な書類です。

必要書類の一覧表右欄にある「帳票」と言うのは、経済産業省のHPに用意されている各種申請書類の帳票番号を表しています(以下同様)。

手続き② 経済産業局による確認

申請窓口はこちらから確認できます。

経済産業局に申請をすると、先ほどのベンチャー企業要件を満たす企業か否かが判定されます。最低2週間ほど要します。

手続き③ 事前確認書の取得

エンジェル税制の対象企業であることが確認されると、経済産業大臣から「事前確認書(様式第2)」が交付されます。
事前確認書の有効期間は最長で申請した日の属する事業年度末までです。

「事前確認書(様式第2)」は手順⑤の資金調達後の確認申請で必要となりますので、ベンチャー企業にて保管しておいてください。

手続き④ 資金調達(投資契約の締結)

投資契約ついては経済産業省のHPに様式が掲載されています。必ず記載しなければならない事項がありますので、投資契約書作成の際に参考にしてください。
※法改正により年度により様式が異なっています。必ず払込日時点での様式を使用してください。

手続き⑤ 資金調達後の確認申請

事前確認書を交付されたベンチャー企業は、実際にエンジェルから投資を受けた後、エンジェル税制の適用を受けるため、改めて経済産業局へ確認申請を行う必要があります。
なお、その際には投資の日時点で要件が確認されます。

資金調達後の確認申請に必要な書類については下表をご確認下さい。

調達後申請必要書類

出典:経済産業省「エンジェル税制確認申請の手引き」より

エンジェル税制の対象企業であると確認されると、経済産業大臣から「確認書(様式第7)が交付されます。
この「確認書(様式第7)」は手続き⑧にてベンチャー企業からエンジェルへ交付する確認書です。

手続き⑥ 経済産業局における確認指導

株式が払込により取得されたことなど、エンジェル側の要件が確認されます。最低2週間ほど要します。

手続き⑦ 経済産業省から確認書を取得

手続き⑧ ベンチャー企業からエンジェルへ書類を提出

ベンチャー企業はエンジェルが確定申告時に添付する「確認書(様式第7)」および付属書類を交付しなければなりません。
交付する書類は以下の3点です。

ベンチャー企業からエンジェルへ交付する書類

※「株式異動状況明細書」については、エンジェルがベンチャー企業の株式を取得した場合や、ベンチャー企業がエンジェルからベンチャー企業の株式を譲渡または贈与したことの報告を受けた場合に作成し、エンジェルへ交付します。

 

事前確認を受けずに、資金調達後に申請を行う場合の手続き

もちろん、ベンチャー企業は事前確認を受けずに、資金調達後に申請を行うことも可能です。
その場合のベンチャー企業の手続きは以下の通りです。

手続き① 資金調達(投資契約の締結)

投資契約の参考様式はこちら

手続き② エンジェル税制適用のための確認申請

個人投資家による資金の払込期日時点でベンチャー企業要件と個人投資家要件を満たす必要があります。
ベンチャー企業が確認申請をする際に必要な書類については以下の通り。

パターン別調達後申請必要書類

出典:経済産業省「エンジェル税制確認申請の手引き」より

表中のア~カの区分は事前申請の場合と同じです。

また、パターンに依らず必要となる書類もあり、以下の通りです。

パターンによらず必要となる書類

出典:経済産業省「エンジェル税制確認申請の手引き」より

 

手続き③ 経済産業局における確認

前述のエンジェル税制適用対象要件に該当するか否かが確認されます。
最低2週間程度要することにご注意ください(その年の個人投資家の確定申告(2月~3月中旬頃)に間に合うように、発行会社は、早めに確認手続きを行ってください。
エンジェル税制の対象と確認されると、経済産業大臣から「確認書(様式第7)」が交付されますので、ベンチャー企業はこれをエンジェルに交付します。

確認の申請窓口はこちら

 

エンジェル側の手続き:投資から確定申告まで

初めに行ったとおり、本稿は直接投資のみを対象としていますので、直接投資をした際のエンジェル側に必要な手続きを解説します。

直接投資(個人が直接ベンチャー企業の株式を取得する場合 (経済産業省の認定を受けていない投資事業有限責任組合経由も含みます))
※民法組合および 投資事業有限責任組合経由でも、直接投資と同様の手続きとなります。
※投資事業有限責任組合が経済産業省の認定を受けても、所得控除(寄附金控除:優遇措置A)を受けようとする場合には、直接投資と同様の手続きとなりますのでご注意ください。

手続き① ベンチャー企業への投資(投資契約の締結)

投資契約の記載事項についてはこちらに様式が掲載されています。必ず記載しなければならない事項がありますので、投資契約書作成の際に参考にしてください。
※法改正により年度により様式が異なっています。必ず払込日時点での様式を使用してください。

手続き② ベンチャー企業は、エンジェル税制適用のための確認を経済産業局へ申請

前述の通り、事前確認制度を利用する場合と、資金調達後に申請を行う場合があります。

手続き③ ベンチャー企業から「確認書(様式第7)」の取得

手続き④ 確定申告

エンジェルはエンジェル税制の適用を受けるため、確定申告書に必要な書類を添付しなければなりません。

添付する書類は、以下の(1)~(5)のどの優遇措置を受けようと思っているかによって変わります。

確定申告必要書類

(1)~(5)のどのパターンに該当するかが分かったら、次は下表にあてはめて、必要な書類を確認します。

パターン別確定申告必要書類

出典:経済産業省「エンジェル税制確認申請の手引き」より

 

各種申請書類のダウンロード

これまでに説明した各種申請書類は、こちらの経済産業省のHPよりダウンロードできます。必要書類の一覧表右欄にある「帳票」と言うのは、このリンク先にある各帳票の番号を表しています。

 

とっても簡単な要件判定シート

上記のベンチャー企業要件やエンジェル側の要件はちょっと、複雑でしたね。

そこで、関東経済産業局がエンジェル税制要件判定シートなるものを作成しています。
このシートで画面を進めながらエンジェル税制の要件を判定し、要件を満たす場合には、パターンに応じた申請書類の一覧を確認することができます。

 

まとめ

さて、以上でエンジェル税制の説明は終わりです。

各種申請書類を用意するのは少し大変ですが、減税効果の大きな制度ですので、是非活用していただきたいと思います。

そこで、ここで経済産業省のHPに記載されているエンジェル税制の活用例へのリンクを貼っておきます。

エンジェル税制の活用事例

  1. 老舗自転車メーカーが車イス製造販売に挑戦 ⇒ 300万円の投資で47万円の減税!
  2. 建設会社が子会社を設立して、有料老人ホームを開設 ⇒ 900万円の投資で228万円の減税!
  3. 中小企業3社が連携して、新製品を開発 ⇒ 200万円の投資で34万円の減税!
  4. 中小メーカーと中小販売会社が連携して新販売先を開拓 ⇒ 490万円の投資で59万円の減税!
  5. 青果卸業者が共同で青果輸出商社を設立して輸出を開始 ⇒ 200万円の投資で41万円の減税!
  6. 商店街で、若者向けブティックを誘致 ⇒ 50万円の投資で10万円の減税!
  7. 共同で地域ブランド製品を製造するむらおこし企業の設立 ⇒ 100万円の投資で12万円の減税!

いかがでしょうか。50万円という手ごろな投資額の事例から、投資額の25%超が減税された事例まで様々なものがありますね。
もちろん金額だけでなく、その態様も豊富に紹介されていますので、是非一度ご覧になってください。もしかすると、あなたの新しいビジネスの資金調達に役立つ事例があるかもしれませんよ。

 

最後に、エンジェル税制の対象要件に使われた専門用語のうち、本稿で説明しきれなかったものについて、経済産業省のHPに記載されている定義を掲載しておきます。

(付録)エンジェル税制の対象要件のポイント解説(出典:経済産業省HPより)

中小企業」とは、“中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律”第2条第1号から第5号に定義する中小企業のことで、中小企業基本法の第2条で定められている中小企業者と同様の定義です。具体的には以下をご確認下さい。
業種ごとに、資本金額基準と従業員数基準のいずれかを満たせば中小企業に該当します。
(業種-資本金額-従業員数の順で記載しています。)

ソフトウェア業、情報処理サービス業-3億円以下- 300人以下
サービス業-5,000万円以下-100人以下
卸売業-1億円以下-100人以下
小売業-5,000万円以下- 50人以下
旅館業-5,000万円以下- 200人以下
ゴム製品製造業-3億円以下-900人以下
製造業、建設業、運輸業、その他の業種-3億円以下-300人以下

研究者」とは、特定の研究テーマを持って研究を行っており、社内で研究を主として行う方で、試験研究費等に含まれる支出がなされる方が該当します。

新事業活動従事者」とは、新規製品やサービスの企画・開発に従事する方や、新規製品やサービスが市場において認知されるために必要となる広告宣伝や市場調査の企画を行う方が該当します。

試験研究費等」とは「試験研究費」と「その他の費用」とを含みます。
試験研究費」とは新たな製品の製造または、新たな技術の発明にかかる試験研究のための特別に支出する費用のことです。
その他の費用」とは新たな技術、もしくは新たな経営組織の採用、技術の改良、市場の開拓または新たな事業の開始のための特別に支出する費用。

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