経営のための地図持ってますか?CVP分析を極める!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

地図

CVP分析ってなんだ?!

皆さんはCVP分析、または損益分岐点分析という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

実はこのCVP分析、経営上、目標達成のための地図とでもいえる管理・分析手法なんです。
本稿では、このCVP分析を徹底的に解説し、皆さんにも是非この経営のための地図を使いこなして頂きたいと思います!

これまでCVP分析をかじったことのある方の中には、グラフや数式が出てきて苦手意識がある方もいらっしゃるかもしれませんが、本稿では徹底的にわかりやすく解説いたしますので、安心して読み進めてください。

もちろん、初めてCVP分析という言葉を聞いた方にもわかりやすく説明していますので、是非この機会にCVP分析をマスターして、ご自身の経営に役立ててくださいね。

制度会計と管理会計

CVP分析について説明する前に、CVP分析を含む管理会計、そして管理会計を含む会計分野について概観してみたいと思います。

とはいえ、ここは本題ではありませんので、早くCVP分析の具体的手順を知りたいって方は、次の「固定費か変動費かそれが問題だ」まですっ飛ばして頂いてOKです。

会計は大きく、会社法、金融商品取引法、法人税法などの各種の法制度に定められた方法で行う「制度会計」と、それらの法制度にとらわれず、利用者が利用しやすい方法によって行われる「管理会計」とに分類されます。

そもそも会計とは、企業の業績を利害関係者に対し数値で報告するものですが、制度会計と管理会計の分類は報告する利害関係者が企業外部者であるか、または内部者であるかと密接に関係しています。

株主、取引先などの企業外部の利害関係者へ報告する際に、各企業がそれぞれ独自のルールで自社の業績を測定し報告したとすると、外部利害関係者はそれらの情報を比較することができなくなってしまいます。そこで、外部利害関係者への報告では各種の法制度によって定められたルールにしたがって、報告することが必要となります。

一方、企業内部の利害関係者である、経営者、管理者、従業員への報告は、他社との比較よりも自社の業績の適切な把握のほうが優先されるべきです。したがって、これらの報告には法規制にとらわれない管理会計のほうが適しているというわけですね。

管理会計というと、製造コスト計算である原価計算が思い浮かぶ方もいらっしゃると思いますが、原価計算に限らず、収益性や成長性、生産性、安全性分析といった経営分析、また、現在の業績だけでなく投資の意思決定などの将来性分析なども管理会計という分野に含まれます。

原価計算は原価計算基準によってその適用方法が定められていて、原価計算の結果は会社法などで作成が義務付けられている計算書類にも反映されるので、実際には制度会計の側面も持ち合わせているんですけどね。

さらに、原価計算は売上を増やすことなく、在庫を多く抱えることで売上原価を圧縮し、見せかけの利益を増大させることができるという、管理会計としては致命的な欠陥を抱えています(このあたりについて、高田直芳著「ほんとうにわかる管理会計&戦略会計」に詳しいですので、興味のある方はご覧になってみてください。ここでは、原価計算は管理には役立たないということを知ってもらえれば十分です)。

そこで今回は、本当に管理に役立つ手法の一つとしてCVP分析について説明いたします。CVP分析は管理会計の一手法でありますが、その目的は短期利益計画にあります。つまり、今期どれくらい売り上げをあげれば利益がいくらでるかということが手に取るようにわかり、販売計画が立てやすくなるのです。

それでは早速CVP分析の説明に移りましょう。

固定費か変動費かそれが問題だ

先ほど言ったように、CVP分析は短期利益計画のための一手法です。

短期的な利益計画のためには、経営者が操作可能な営業量(例えば売上高など)を変化させた場合に、利益や原価がどのように変化するのかがわからなければなりません。そして、この点で伝統的な原価計算は役に立たないのです。

CVP分析のCVPとはそれぞれCost、Volume、Profitの頭文字をとったものです。それぞれの意味は以下の通りです。

  • Costとは企業で発生する費用を指します。
  • Volumeとは営業量のことであり、多くの場合売上高を指します。
  • Profitとは利益、特に営業利益を指しています。

実は、CVP分析と原価計算とでは、費用の範囲とその分類に大きな違いがあります。

まずはCVP分析で扱う費用の範囲を確認しましょう。

CVP分析での費用とは

CVP分析で費用といえば、原価計算で扱う製造原価だけでなく、販売費及び一般管理費までをも含みます。製造原価に限らず、営業に関する原価をすべて含むことで、利益計画を作成することが可能となるのです。

また、その分類も伝統的な原価計算とは異なります。
原価計算では、製造原価のうち製品に直接紐づけられるものを直接費、それ以外を間接費として扱いますが、CVP分析ではこのような分類を行いません。

CVP分析では営業量(例えば売上高など)との関連で費用を固定費と変動費とに分類します。

つまり、営業量の増加にともなって増加する費用を変動費として分類し、営業量の増減にかかわらず、ある期間に一定額発生する費用を固定費として扱います。
このように費用を固定費と変動費に分類することをを固変分解といいます。

例えば、製造業では製造のための重機の燃料費などは、売上高(営業量)が増えるにつれ製造量も増え、燃料費も増加すると考えられますので、変動費として扱います。

一方、小売業における販売店の家賃などは売上高(営業量)の増減にかかわらず一定ですので、これらは固定費となります。

なんとなく変動費と固定費の違いがお分かりいただけたでしょうか?
それでは、実際にどのように固変分解を行うのかを見ていきましょう。

勘定科目を基礎とした固変分解

CVP分析は固変分解をその出発点とします。そして、この固変分解の精度がCVP分析の精度に大きく影響を及ぼします。

しかし、実際に固変分解を行おうとすると意外に難しいことに気付きます。
そこで、中小企業庁では業種別に以下のように固変分解を行うことを推奨しています。

先ほど言ったとおり、製造原価だけでなく販売費及び一般管理費まで含んでいることを念頭に、さらっと確認してみてください。

製造業

固定費

直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、水道光熱費、旅費、交通費、その他製造経費、販売員給料手当、通信費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、交際・接待費、その他販売費、役員給料手当、事務員(管理部門)・販売員給料手当、支払利息、割引料、従業員教育費、租税公課、研究開発費、その他管理費

変動費

直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、重油等燃料費、当期製品知仕入原価、当期製品棚卸高―期末製品棚卸高、酒税

卸・小売業

固定費

販売員給料手当、車両燃料費(卸売業の場合50%)、車両修理費(卸売業の場合50%)販売員旅費、交通費、通信費、広告宣伝費、その他販売費、役員(店主)給料手当、事務員(管理部門)給料手当、福利厚生費、減価償却費、交際・接待費、土地建物賃借料、保険料(卸売業の場合50%)、修繕費、光熱水道料、支払利息、割引料、租税公課、従業員教育費、その他管理費

変動費

売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料、車両燃料費(卸売業の場合のみ50%)、保険料(卸売業の場合のみ50%)
注:小売業の車両燃料費、車両修理費、保険料は全て固定費

建設業

固定費

労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、現場従業員給料手当、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、その他経費、役員給料手当、退職金、修繕維持費、広告宣伝費、支払利息、割引料、減価償却費、通信交通費、動力・用水・光熱費(一般管理費のみ)、従業員教育費、その他管理費

変動費

材料費、労務費、外注費、仮設経費、動力・用水・光熱費(完成工事原価のみ)運搬費、機械等経費、設計費、兼業原価

これらを見ると、勘定科目によって固定費と変動費を分類していることが分かると思います。しかしながら、この分類はあまりに大雑把といえるのではないでしょうか。

例えば、上記の製造業では、原価計算基準において直接工の直接作業時間にかかる費用をあらわす直接労務費を固定費として分類しています。
確かに定額の給与については固定費として扱って問題ないでしょうが、残業手当に相当する部分は変動費としての性質を持っていると考えられますよね。

これは、管理会計になじまない原価計算基準における分類を使用していることから問題が生じているのです。
固変分解にはこの他に日銀方式といったものもありますが、これも勘定科目を基準としていることから同様の問題があります。

そこで今回は、もう少し実用的な固変分解をご紹介したいと思います。

実績値を使用した固変分解

中小企業庁方式、日銀方式での固変分解には問題点がありました。それでは実際にはどのように固変分解を行えばよいのでしょうか。

ある程度実績のある企業では、自社の実績値を使用した固変分解を行うことが可能です。実績値を使用することにより勘定科目にとらわれない固変分解ができます。

ですが、実績値での固変分解の説明に入る前に、まずは、CVP分析における費用がグラフ上どのように描かれるのか見て少しずつグラフに慣れていきましょう。

丁寧に説明していきますので、身構える必要はありませんよ。

CVP 基本図

固定費はその定義から営業量(上図では売上高)に関わらず一定の費用ですので、上図の赤い線のように水平に描けますよね。
売上高が増えようと(グラフ上、右側に行こうと)、固定費は同じ(グラフの高さは同じ)ということです。

一方、変動費は営業量の増加に比例して増加する費用ですから、上図の青線のような斜線となります。 売上高が増えると(グラフ上、右側に行くと)、変動費は増加する(グラフの高さが高くなる)ということです。

固定費と変動費の合計、上図ではオレンジの矢印で表されている部分が総コストです。変動費があることで、総コストも売上高が増加するにつれ増えていくことがわかりますね。

これが、CVP分析における費用線の基本的な形です。 それでは次に、実績値を使ってどのように費用線を描くか確認していきましょう。

手元に20X1年から20X5年までの売上高と総コストに関するデータがあるとします。そして、これをグラフ上にプロットすると以下のようになったとします。

CVP 実績プロット

このように実績値をプロットしたあと、各年度の費用の平均を通る線を目分量で引けば、これが変動費線となります。また、そうやって描いた変動費線と費用軸との交点が固定費となるのです。

CVP 実績プロット後

 

いかがです?簡単でしょう?

もしかすると、目分量で引いた線でCVP分析を行うことに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、この方法はスキャッター・チャート法というれっきとした固変分解の方法であり、多くの場合、中小企業庁方式や日銀方式のような科目別の固変分解よりも正確にCVP分析を行うことができます。

そして、固変分解の精度をさらに上げるには、統計学における最小自乗法をを用いる方法もあります。

次ではもう一つの固変分解方法、最小自乗法について説明いたします。

ちょっと上級の固変分解、最小自乗法

実績値からスキャッター・チャート法で描いた先ほどの総コスト線のグラフを再掲します。

CVP 実績プロット後(説明なし)

総コスト線(固定費と変動費を合計した線。上図では青線)は各実績値プロットの平均を通るように目分量で引いたのでしたね。 最小自乗法は目分量で引いた平均線を、統計学的手法によって導こうとするものなんです。

あらかじめお伝えしておくと、この最小自乗法では一次関数や総和、方程式という用語が出てきます。慣れないうちは拒否反応が出る方もいらっしゃるかもしれませんが、実は数式がややこしいわりには、やることは簡単です。

数式を見て分からない場合は読み飛ばしていただいて構いませんし、以下の説明では、実際に数値例を使って説明していきますので、ご安心下さい。

また、万が一分からなかった場合でも、固変分解に必ず最小自乗法を使わなければならないというわけではありませんので、先ほどのスキャッター・チャート法で固変分解を行えばOKです。その場合は次の「総コスト線に売上高線を重ねる」まで飛んでいただいて結構ですよ。 固変分解はCVP分析の一過程にすぎませんので、最小自乗法が分からないというだけでCVP分析自体を諦めてしまうのはもったいないですからね。

それでは実際に最小自乗法による固変分解を見ていきましょう。

最小自乗法では、総コストをy、営業量(ここでは売上高)をxとし、y=ax+bという一次関数がグラフ上描けるという前提にたって、この一次関数で表される総コスト線と各プロットとの乖離具合が最小となるようなa、bを求めていきます。

そして、それは以下の正規方程式を解くことで求めることができます。

  1. Σy=nb+aΣx
  2. Σxy=bΣx+aΣx2
      (nは実績値の数を表す。また、Σは総和を表す記号である)

はい。ややこしそうな数式がでてきましたね。でも大丈夫です。 次では数値例を使って詳細に説明していきますのでご安心ください。

最小自乗法の具体的手順

では早速、以下の数値例を用いて最小自乗法による総コスト線を求めてみます。

仮に、過去5年の実績値が以下のようだったとします。

CVP実績値データ

この実績値を用いて、x2およびxyを一つずつ計算し、総和を求めます(下表ではx2をx^2と表しています)。

それぞれの意味は以下の通りですよ。

  • x2(x^2);xを2回掛け合わせる。
  • xy;xとyを掛け合わせる。
  • Σ(シグマ);総和。つまり合計のこと。

CVP実績値データ2

上表の作成手順は以下の通りです。

まずは、20×1年~20×5年の各年について、x2とxyを5年分計算します。

次に、y、x、x2、xyを5年分合計します。これでΣy=7,100、Σx=8,100、Σxy=12,060,000、Σx2=14,070,000と求めることができます(一番下の行を見てください)。

そして、これを上記の1.式および 2.式に代入すると以下のようになります。5年度分の実績値ですので、n=5とします。

  1. 7,100=5b+8,100a
  2. 12,060,000=8,100b+14,070,000a

これを解くと、a=0.589、b=467(百万円)と求まります(端数処理しています)。 つまり、この数値例での総コスト線は、y=0.589x+467 ということになります。

横軸の営業量を売上高としていますので、a=0.589は売上高が1万円増加するごとに総コストが0.589万円増加することをあらわしています。

ちなみに、営業量である売上高の増加に伴って増加するのは変動費ですので、aは変動費率(=変動費/売上高)を表していることになりますよ。

求めた総コスト線をグラフに描くと、以下のようになります。

CVP 最小自乗

以上により、総コスト線が描けました(変動費と固定費の合計が総コストです。上のグラフでは横軸から青色の線までの高さが総コストとなります)。

ここまででCVP分析のCost、Volume、Profitのうち、Cost、すなわち費用について把握できたこととなります。

黒字のためにはいくら売らなければならないのか

さて、スキャッター・チャート法や最小自乗法により総コスト線が引けたら、そのグラフに売上高線を重ねることで、営業利益が赤字から黒字へ変わる損益分岐点売上高を求めることができます。

つまり、損益分岐点売上高を超えない限り、本業での利益である営業利益が赤字となり、事業の継続性が危うくなるということです。

それでは早速、損益分岐点売上高を求めてみましょう。ここからがCVP分析の真骨頂です。

総コスト線に売上高線を重ねる

これまでの説明により、スキャッター・チャート法にせよ、最小自乗法にせよ、以下のような総コスト線(固定費と変動費との合計を表す線)が描けたと思います。

CVP総コスト線

なお、上記のグラフでは縦軸を「費用」から「金額」へ変更しています。この総コスト線に売上高線を重ねるための前準備です。

では、売上高線を重ねていきましょう。このグラフでは横軸である営業量に売上高を採用していますので、縦軸、横軸共に単位は(万円)となります。そのため、売上高線は45度線となります。すなわち傾き=1の原点を通る一次関数です。

CVP売上高線

45度線である売上高線(緑の線)の傾きは1であり、それに対し変動費線の傾きは1より小さいため、売上線と総コスト線が交じりあう点ができます。

この交点は売上高と総コストが釣り合う点ですので、この交点から垂直に線を引けば、横軸との交点で損益分岐点売上高を求めることができます。

CVP損益分岐点売上高

それでは、先ほど最小自乗法での数値例で求めた総コスト線 y=0.589x+467 を使って、実際に損益分岐点売上高を算定してみましょう。

総コスト線と売上高線 y=x の交点ですから、y=xをy=0.589x+467 に代入して、x=1,136と求まります(端数は処理しています)。

グラフは以下のようになります。

CVP損益分岐点売上高 実績値

グラフからもわかるように、損益分岐点売上高は総コストと一致する売上高ですので、以下のように表せます。

BES=F+V
(BES:損益分岐点売上高、F:固定費、V:変動費)

また、損益分岐点売上高は製品一つ当たりの価格×損益分岐点販売量であり、変動費は販売量に比例して増加する費用ですので、上式は以下のように書き換えることができます。

px=F+vx
(p:製品一つ当たりの販売価格、x:損益分岐点販売量、v:製品一つ当たりの変動費)

この例では損益分岐点売上高が1,136万円ですので、仮に製品一つ当たりの販売価格を10,000円とすれば、1,136個販売しなければ営業利益がマイナスとなるということになります。

さて、これでCVP分析のCostおよびVolumeについての分析が終わりました。 残すはProfitのみです。CVP分析をマスターするまで、あと一息ですよ!

目標利益を達成するためにはいくら売らなければならないのか

いよいよCVP分析の最終目標であるProfit、すなわち利益の分析です。

CVP分析を用いれば、損益分岐点売上高だけでなく、目標とする営業利益を設定し、その目標利益を達成するためにはどれほど販売すればいいのかも求めることができます。

前工程では、損益分岐点(例では横軸である営業量に売上高をとっていますので損益分岐点売上高)が求まりました。

そして、損益分岐点より右側、売上高線が総コスト線を上回っている部分では、営業利益が発生することになります。
逆に、損益分岐点の左側である、売上高線が総コスト線を下回っている部分では、営業損失が発生しています。

図示すると以下の通りです。

CVP 営業損益

そして、目標営業利益を仮に200万円と設定したとして、これまでのグラフで示すと以下のようになります。

CVP 目標利益

つまり、損益分岐点の右側において、売上高線と総コスト線の間隔が200万円となるところから垂直に線を引き、その垂直線と横軸とが重なるところが、目標利益を達成するために必要な売上高、すなわち目標売上高となります。

ここでは、この目標売上高はどのように求めればよいのかを説明します。

まず、損益分岐点売上高は以下の式で表されるのでしたね。

BES=F+V
(BES:損益分岐点売上高、F:固定費、V:変動費)

今は、固定費と変動費だけでなく、これに目標営業利益を加えた売上高を求めようとしているので、目標売上高の式は以下のようになります。

TAS=F+V+G
(TAS:目標売上高、F:固定費、V:変動費、G:目標営業利益)

目標売上高は製品一つ当たりの価格×目標販売量であり、変動費は販売量に比例して増加する費用ですので、上式は以下のように書き換えることができます。

px=F+vx+G
(p:製品一つ当たりの販売価格、F:固定費、x:目標販売量、v:製品一つ当たりの変動費、G:目標営業利益)

上式のxについて整理すると

x=(F+G)/(p-v)
(p:製品一つ当たりの販売価格、F:固定費、x:目標販売量、v:製品一つ当たりの変動費、G:目標営業利益)

となり、これが目標利益を達成するために必要な販売量(目標販売量)となります。

仮に製品一つ当たりの販売価格を10,000円とすると、製品一つ当たりの変動費v は変動費率が0.589ですので5,890円となります。
したがって、目標販売量は1,622個、目標売上高は1,622万円となります(端数は処理しています)。

グラフでも確認しておきましょう。

CVP目標利益決定

これで目標利益を達成するための、目標販売量、目標売上高が算定され、利益計画も立てやすくなると思います。 これこそがCVP分析が経営のための地図と言われる所以です。

さて、ここまでで、一通りCVP分析についての説明は終わりましたが、短期利益計画を立てる際に知っておくと便利な概念として、貢献利益というものがあります。

次からは、この貢献利益を使った、短期利益計画の立て方を説明いたします。

貢献利益について

貢献利益という新しい言葉が出てきましたが、これまでの説明の延長線上ですのでご安心ください。

前工程での目標売上高達成のための式を再掲します。

TAS=F+V+G
(TAS:目標売上高、F:固定費、V:変動費、G:目標営業利益)

販売量に応じて変化する目標売上高と変動費を左辺集めると以下のようになります。

TAS-V=F+G
(TAS:目標売上高、F:固定費、V:変動費、G:目標営業利益)

この変化をグラフで表すと、以下のようになります。

CVP 図表変形

売上高線は傾き1の45度線でした。そして変動費線は変動費率0.589の一次関数でしたので、売上高線から変動費線を控除すると、傾き0.411(=1-0.589)の原点を通る一次関数が描けます。この線を貢献利益線と言い、傾き0.411は貢献利益率です。

つまり、貢献利益とは売上高から変動費を控除したものであり、製品一つ当たりの貢献利益額によって固定費を回収していき、固定費を回収しきったら、営業利益として計上されるということです。
式で表すと、以下のようになります。

貢献利益=売上高―変動費

そのため、貢献利益線と固定費線が交わる売上高を損益分岐点売上高、貢献利益線が目標営業利益分固定費線を上回る売上高を目標売上高として求めることができます。

CVP 貢献利益線

これにより、目標売上高達成のための式は以下のように変形できます。

TAS-V=F+G
(TAS:目標売上高、F:固定費、V:変動費、G:目標営業利益)

製品一つ当たりの販売価格をp、目標販売量をx、製品一つ当たりの変動費をvとすると、

(p-v)x=F+G
(p:製品一つ当たりの販売価格、v:製品一つ当たりの変動費、x:目標販売量、F:固定費、G:目標営業利益)

が導けます。
ここで出てきた(p-v)が製品一つ当たりの貢献利益額を表しています。製品一つ当たりの貢献利益額をmとすると、

mx=F+G
(m:製品一つ当たりの貢献利益額、F:固定費、G:目標営業利益)

となります。

また、貢献利益率mr(=1-変動費率(vr))を用いれば、

mr・TAS=F+G
(mr:貢献利益率、TAS:目標売上高、F:固定費、G:目標営業利益)

とも表せます。
したがって、固変分解をし、固定費Fと貢献利益率mrを明らかにしておけば、目標利益Gを達成するための売上高、すなわち目標売上高TASが算定できるわけです。

もちろんG=0とすれば、損益分岐点売上高BESですので、以下の式が成り立ちます。

mr・BES=F
(mr:貢献利益率、BES:損益分岐点売上高、F:固定費)

つまり、損益分岐点売上高は

BES=F/mr
(mr:貢献利益率、BES:損益分岐点売上高、F:固定費)

によって、簡単に求めることもできるということです。

まとめ

さて、これまで長々とCVP分析についての説明をしてきて、少し混乱してきた方もいらっしゃるかもしれません。

ここまでの手順をまとめると、

  1. 実績値を使って総コストを固変分解する
  2. 変動費率(変動費線の傾き)を算定する
  3. 貢献利益率(=1-変動費率)を求める ※省略可
  4. 損益分岐点売上高を求める
  5. 目標利益を設定し、目標売上高を求める

ということです。
これにより、勘や経験に頼っていた利益計画を数値に落としこむことができます。
自社の販売価格で目標利益を達成するためには、製品を何個販売すれば良いかがわかるわけです。

必要な販売個数を求めた結果、これまでの実績販売個数の2倍は売らなければならないなどの現実的でない数値となっていれば、貢献利益率を高めるか(つまり、販売価格を上げるか、変動費率を下げる)、固定費を圧縮するなどして、現実的な利益計画を作成しなおす必要があります。

また、これまでの説明では取り扱っている製品を1種類と仮定していましたが、これが複数製品であってもCVP分析は可能です。 さらに、横軸の営業量は売上高に限らず、適切な営業量(販売数量や生産量など)を用いることが可能ですし、それが望ましいです。
営業量の決定は、総コストの固変分解に影響し、誤った営業量指標は変動費線を歪め、CVP分析を役に立たないものにしてしまいます。
なるべく変動費が右上がりの直線になるような営業量を横軸に選ぶと良いでしょう。

ここでは踏み入ってお話はしませんが、複数製品によるCVP分析や営業量の決定についても会計士や税理士といった専門家の力を借りることで、より精緻かつ正確な分析ができます。
説得力のあるCVP分析は企業外部の利害関係者である銀行や取引先への説明資料としてだけではなく、企業内部の利害関係者である従業員のやる気を高め、経営者の経営判断の助けとなるものです。
是非、CVP分析を取り入れ利益計画を作成してみましょう!

資金繰り管理のススメ

「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあると思います。

会計上は利益が出ているのにもかかわらず資金がショートし、倒産してしまうことです。

資金は「会社の血液」と呼ばれるように、会計上の利益の有無に関わらず、資金が止まってしまえば会社は存続できません

特に、成長企業や入金サイトと出金サイトのズレが大きな業種では、資金繰り管理が重要となります。

また、資金繰り管理を行い、銀行との付き合い方を改善することで、融資可能性が格段にアップします!

弊所、会計事務所シンシアの運営するサイト『資金繰り管理のススメ』で、資金繰り管理の重要性を認識し、資金繰り管理にチャレンジしてみましょう!

『資金繰り管理のススメ』コンテンツ

  • 資金繰り管理してますか?
  • 成長企業こそ資金繰り管理を
  • 銀行はどれほど試算表を信用しているか?
  • 銀行のジレンマ
  • 最近の銀行融資の動向
  • 収支分岐点売上高の把握
  • 資金繰り管理のススメ
  • 『資金繰り顧問』のご案内

『資金繰り管理のススメ』はこちら

SNSでもご購読できます。

ビズバ!ではお伝えしきれない、よりタイムリーな補助金・助成金・税制などのお得な情報や、資金調達に関する裏話などを、メルマガで配信しています。 メルマガ受信ご希望の方は、メールアドレスを入力してください!

コメント

コメントを残す

*