会社が死ぬときにあなたができること。解散・清算そして休眠

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会社が死ぬとき

会社が死ぬとき

会社法が改正され最低資本金制度が撤廃されたことにより、以前より簡単に会社を設立することができるようになりました。
会社設立が低コストでできるようになったことは、最低限の製品やサービスで市場やユーザーの反応を確認し、仮説の構築と検証を短いサイクルで繰り返しながらニーズを探り当てていくリーン・スタートアップの手法を実践しやすくなったとも言えるでしょう。
ビジネスにおいては、何が成功し、何が失敗するのかを予測するのは困難ですので、まずは小さくスタートし、軌道に乗ってきた事業に徐々に注力していくというのも戦略の一つです。

一方で、会社設立のハードルが下がるということは、市場から追い出される会社も増えることを意味します。 営利企業は市場でしか生きていけませんので、会社が市場から追い出されるということは、会社の死を意味します。

ちょっと暗い話ではありますが、本稿では会社が死ぬ際の手続き、いわば会社のお葬式について解説いたします。

なお、本稿において特に断りが無い場合、「会社」とは株式会社を指しています。

会社が存続することによりかかるコスト

会社は市場でしか生きられないと言いましたが、市場から追放されたとしても存在すること自体は可能です。しかし、その場合であっても会社を存在させることには一定のコストがかかります。

会社が存続することによるコストの一つに税金があります。

会社にかかる税金は大きく分けて、国税である法人税と地方法人税、地方税である法人住民税と法人事業税といった4つがあります。
法人を対象とした税金は基本的に所得に対して課されますから、所得、すなわち税務上の利益をあげていない会社には税金はかかりません。

しかし、例外もあります。 上記のうち、法人住民税については所得に対してかかる部分(所得割課税)だけでなく、資本金等の額や従業員の数によって課される均等割課税が存在します。
また、法人事業税については資本金1億円超の法人を対象として外形標準課税が存在します。

例えば都民税の均等割税額は下表の通りですが、これらは所得の有無に係わらず、会社が存在しているだけで納税しなければならない金額です。

都民税均等割の税率表

都民税均等割の税額表-東京都主税局HPより

上の表を見ると、資本金が1億円以下で外形標準課税が無い会社でも、法人住民税の均等割が毎年最低7万円かかってくることが分かると思います。

しかも、「会社設立のキモ、定款の書き方逐条解説!雛型プレゼントも!」に掲載している定款雛型の25条を見ていただくと分かるように、株式会社の取締役には任期があり、これが定款に記載されています。

取締役の任期満了時には、取締役構成メンバーの変更の有無に係わらず役員変更登記が必要となり、この際に1万円の登録免許税がかかります(資本金の額が1億円超の会社は3万円)。
取締役の任期は2年(非公開会社(株式譲渡制限会社)では、定款で10年まで伸長可能)ですので、毎年かかるというわけではありませんが、会社存続のためのコストに変わりはありません。

 

解散

以上より、会社は存在するだけで一定のコストがかかるということがお分かりいただけたと思います。

もちろん、これらの税金(法人住民税均等割課税、法人事業税外形標準課税、登録免許税)を負担できる資金があれば会社は存在可能なのですが、会社は税金を払うために存在するわけではありませんよね。
これ以上の進展が見込まれないのであれば、会社の死を受け入れることも必要でしょう。

会社の死とは会社を解散し、清算することです。単に解散したのみでは会社(の法人格)は消滅せず、解散後は清算しなければならないということに注意してください。

会社の解散後、保有している資産を処分・換金し、それをもって債務を弁済するか、債務免除を受けて、その上で仮に残余財産があればそれを株主に分配することを清算手続きと言いますが、清算手続きを経ることでようやく会社が消滅することとなります。

 

まずは、解散にフォーカスを当て、清算については後述いたします。

 

解散の種類

解散には大きく分けて「任意解散」と「強制解散」の2種類があり、それぞれ以下の理由による解散を指します。

任意解散

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散の事由の発生
  3. 株主総会の決議
  4. 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合)

強制解散

  1. 破産手続開始の決定
  2. 解散を命ずる裁判(会社法824条1項または833条1項を参照)
  3. 休眠会社のみなし解散

それぞれについて説明すると、1.の「定款で定めた存続期間の満了による解散」とは、定款により会社の存続期間を定めた場合の解散です。

また、これと似たものに2.の「定款で定めた解散の事由の発生による解散」がありますが、これは定款により会社の解散事由を定めた場合の解散です。

最も一般的なのが3.の「株主総会の決議による解散」でしょう。
株式会社は、いつでも株主総会の解散決議(特別決議)によって解散することができます。 この場合、原則として、解散決議を行った株主総会の日が解散の日となります。
後述する、清算人の選任決議もこの株主総会で同時に行うのが一般的です。
なお、株主総会の決議によって解散する場合、最低でも以下の各時点で株主総会を開催する必要があります(つまり最低でも3回)。詳しくは後述します。

  • 解散、清算人の選任時
  • 財産目録と貸借対照表の承認時
  • 残余財産の分配後の決算報告の承認時

4.の「合併による解散」とは、吸収合併における消滅会社が、合併によって解散する場合を指します。この場合、通常の解散・清算と異なり、清算手続をせずに会社が消滅します。

一方、強制解散の場合には、会社存続の意思があったとしても強制的に解散させられることとなります。
c.の「休眠会社のみなし解散」については後述します。

 

解散手続きと費用

会社が解散されると、本店所在地を管轄する法務局に解散登記をしなければなりません。解散登記には登録免許税3万円が課せられます。

解散登記が完了したら(申請から1週間程度)、税務署と都税事務所(県税事務所等)へ異動届出書を提出します。これには解散登記の登記事項証明書か謄本の添付が必要となりますので、法務局で入手しておきましょう。

異動届出書には「異動事項等」欄に解散した旨を、「異動前」欄に解散前の通常の事業年度(例えば、4月1日~3月31日など)を、「異動後」欄に解散日後の1年ごとに区切られる期間(解散日が9月30日なら、10月1日~9月30日)と清算人の住所及び氏名を記入します。
「異動年月日」欄には、実際の解散日と解散登記日を記載します。

また、社会保険関係手続きとして、解散後5日以内に、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を事業所の所在地を管轄する年金事務所に送付して資格喪失手続きをしなければなりません。

 

解散日までの確定申告

解散日の属する事業年度開始の日から解散日までの期間(3月決算会社の解散日が27年9月30日なら、27年4月1日~27年9月30日)を1事業年度とみなして、その期間にかかる解散確定申告書を解散日の翌日から2ヶ月以内に提出し法人税を納付しなければなりません。

 

清算

さて、会社が解散されると、次に行われるのが清算手続きです。
清算とは、解散した会社について法律関係を整理し、会社財産を換価分配するための後始末をすることを言い、清算手続きに移った会社を「清算株式会社」と呼びます。

 

清算株式会社の行為の制限

清算株式会社は消滅しようとしている会社ですので、通常の会社のように振舞うことはできません。具体的には以下のような制限が課されます。

  • 営業行為の制限 清算株式会社は、解散時に保有している棚卸資産の売却など、清算手続きに必要な範囲でしか営業取引を行うことはできません。
  • 取締役の退任および清算人の就任 通常の営業取引を行わないので、取締役は退任しなければなりません。以降の清算事務は、清算人が行うことになります。 なお、株主総会は、解散前と同じ株主構成で存続します。
  • 剰余金の配当等の禁止 弁済順位の高い債権者へ債務を弁済する前に、株主に対する払戻しを行うことはできません。
  • 合併等の制限 解散した会社は、清算の目的の範囲内でしか権利能力を有しませんので、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社(つまり、買う方)となることはできません。なお、逆に、合併消滅会社や吸収分割会社(売る方)になることはできます。

なお、清算株式会社も株式や社債の発行は可能です。子会社の清算を円滑に行うために、親会社が子会社の新株発行などを引き受けることがあるためです。

 

清算中の各事業年度の確定申告

清算株式会社も確定申告が必要です。
清算手続きに入ると通常の営業取引ができないのだから、法人税は発生しないのではないかと思うでしょうが、清算手続き中に債務免除益などが発生する可能性があり、これが法人税の課税対象となるのです。
そのため、解散日の翌日から1年ごとに区切られた期間(解散日が27年9月30日なら、27年10月1日~28年9月30日)を1事業年度とみなして、それぞれの事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に確定申告書を提出しなければいけません。

 

清算人の登記と費用

解散の登記と同様、清算人も登記しなければなりませんので、清算人の選任は解散の時に行うのが通常です。
解散の登記と清算人選任の登記は解散日より2週間以内に管轄の法務局へ登記申請しなければいけません。清算人選任登記の登録免許税は9千円です。

登記申請書は法務省のHPに「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」がありますので、これを使いましょう。

こちらの記載例に必要な添付資料も記載されています。

 

清算手続き

その後、清算人は遅滞なく清算手続きに移ります。

まず、清算人は解散時の財産目録という解散日における会社の資産や負債の財産状況を示す内訳書を作成します。
そして、財産目録をもとに貸借対照表を作成し、どちらも株主総会の承認を得る必要があります。これにより株主は残余財産額を予測するための情報を得ることができます。

 

解散公告と費用

清算人選任登記の後は、債権者保護のため官報公告等を行わなければなりません。
官報公告は債権者がいない場合であっても必ず2ヶ月間以上行わなければいけません。官報公告は、最寄の官報公告販売所または全国官報販売協同組合のHPから申込みできます。

官報掲載費用はボリュームにも依りますが、3万円程度かかります。

公告期間の満了後から債権者に債務を弁済することができます。
また、官報公告とは別に、清算会社が認識している債権者に対しては個別に、債権を申し出るべき旨を催告しなければいけません。

 

残余財産が確定したときの確定申告

債務の弁済が終了した上でまだ財産が残っている場合は、株主に残余財産を分配します。

残余財産が確定した日の属する事業年度についても確定申告は必要です。
この場合は事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内(ただし、その期間内に残余財産の最後の分配が行われる場合には、その行われる日の前日まで)に確定申告書を提出しなければなりません。

こうして、ようやく清算事務が終了となります。その後、清算人は、清算を結了するため決算報告書を作成し株主総会で承認を得ます。
株主総会承認後、2週間以内に清算結了の登記申請をします。この登記の登録免許税は2千円となっています。

登記申請には法務省HPに「株式会社清算結了登記申請書」の様式があります。

こちらの記載例に必要な添付書類も記載されています。

なお、清算会社の帳簿や清算に関する重要な書類などは、清算人が10年間保存しなければなりません。

 

休眠

会社を存続させておくにはコストがかかりますので、通常であれば解散・清算をして会社を消滅させてしまうのが王道です。

しかし、解散・清算にはこれまで見てきたような費用と手間がかかりますし、もしかすると今後会社が活動を再開する可能性もゼロとは言いきれません。
そんな時には、会社を解散・清算するのではなく、休眠させるという方法もあります。

解散・清算が会社の死だとすれば、休眠は会社を眠らせておくということです(読んで字のごとくですね)。

ここからは、会社を休眠させる方法について解説していきます。

会社を休眠させるための手続き

下の図を見ていただくとわかるように、解散・清算とは違い、休眠の手続きはいたって簡単です。
解散・清算がお葬式なのに対して、休眠は眠るだけですから、当たり前といえば当たり前です。

 

休眠手続

具体的な手続きとしては、以下の通りですが、休眠手続きは正式に定められた手続きではないため、地域により取扱いが異なります。市区役所・町村役場や県税事務所・都税事務所に直接問い合わせていただくのが確実です。

一般的には、まず市区役所・町村役場と県税事務所・都税事務所に休業する旨を記載した異動届出書を提出します。「異動事項等」の欄を「休眠」とし、「異動後」の欄に「〇年〇月〇日より休眠」と記載しておけばよいでしょう。これにより法人住民税均等割が課税されなくなります。

再度注意喚起しますが、地域により異なりますので、市区役所・町村役場や県税事務所・都税事務所に直接問い合わせてください。

念のため税務署にも同様のものを提出しておきましょう。

また、解散・清算の場合と同様に、社会保険関係手続きとして、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を事業所の所在地を管轄する年金事務所に送付して資格喪失手続きをしなければなりません。

 

休眠会社の注意点

大前提として、休眠している会社なのですから、一切の事業活動を停止する必要があります。
つまり、預金口座が経費の引落しや利息の入金などで動いていたり、会社名の入った名刺を使用したりなどしてはいけません。

ただし、休眠中であっても役員の任期が満了すれば変更の登記は必要です。これを怠ると罰金が課される場合もあります。

また、最後の登記から12年経つと、「休眠会社のみなし解散」の規定により、解散登記される可能性がありますが、これは事前に通知はがきが送られてきますので、その時に届出や登記を行えば良いでしょう。

 

休眠会社の税務

休眠し、課税取引がなくなれば、消費税の申告義務がありませんが「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」は提出しておきましょう。

法人住民税については所得割・均等割ともに住民税は、申告義務はありません。

地域により異なりますので、市区役所・町村役場や県税事務所・都税事務所に直接問い合わせてください。

一方で、法人税と地方法人税については、休眠中でも法人が存続している限り申告義務があります。特に、青色申告や欠損金の繰越しなどを継続したい場合は、毎年忘れないようにしてください。
休眠しており取引などは発生していないでしょうから、法人税確定申告書の別表1に会社の納税地、会社名等の基本情報を記載し、「休業中」などと書いて提出すればよいでしょう。

 

まとめ

さて、会社の解散・清算手続き、さらに休眠手続きについてご理解いただけたでしょうか?
活動していない会社をズルズルと存続させているのは、コストがかかるだけでなく、気分的にもモヤモヤしてしまいますよね。
これを機会に是非スッキリさせて、新たなチャレンジを始めてみてはいかがでしょうか。

 

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