中小企業投資育成株式会社について、言えずにいたことを告白します。

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中小企業投資育成株式会社について言えずにいたことを告白します。

前回、「中小企業投資育成株式会社を活用して、安定株主と安定資金を獲得しよう!」と題して、中小企業投資育成株式会社からの投資を受け入れることによって、安定資金の調達、安定株主の確保、従業員の士気向上、取引先との関係改善など様々なメリットがあることを紹介させていただきました。

お陰様で多くの方にお読み頂けたようですが、とある読者の方から「事業承継にも有効ってことは書かないんですか?」とご質問いただきました。

 

事業承継…。はい。そうなんです。実は、中小企業投資育成株式会社から出資を受けることで、事業承継もスムーズに行えるんです。

じゃあ、なぜそのことについて書かなかったかについては、本稿をお読みいただいて、大人な読者の皆様にはご理解いただきたいと思います。

 

事業承継のカギは株価算定にあり!

なぜ中小企業投資育成株式会社から出資を受けることが、事業承継に有効なのでしょうか。

例えば、現在の社長が高齢となり、社長の長男を後継者とする事業承継を考えて見ましょう。

この場合、現社長が保有する自社の株式を、経営権を移すため長男に贈与するか売却する必要があります。

タダで譲った場合には贈与税がかかりますし、売却するためには長男にはそれだけの株式を買えるだけの資金が必要となります。現社長が亡くなったときに相続するというケースも考えられますが、その場合には相続税が発生しますし、亡くなるまで現社長が株式を持ち続けるというのは、経営的にも問題でしょう。

いずれにせよ、事業承継には現社長が保有する株式を後継者に引き継がせる必要があり、その時に贈与税や相続税がかかったり、莫大な資金が必要になったりするわけです。

この場合にキーとなるのが自社の株価というわけです。

勘の良い方はお気づきだと思いますが、贈与税や相続税、購入資金の基礎となる株価を安く評価することができれば、税負担や資金負担を軽減できるというわけです。

 

中小企業投資育成株式会社から出資を受けることで、株価が下がる?!

結論から言うと、中小企業投資育成株式会社から出資を受けると、株価は下がります。

いや、下がる可能性が高いと言ったほうが良いでしょうか。

いや、ここでは「株価が変化する」と言うにとどめましょう。

このあたりが大人の事情といいますか、微妙な論点ですので、前回の記事では避けてしまったのです。

しかし… 「株価が変化する」

なんだか、便利な言葉を見つけました。読者の方からのご指摘をいただき、考え抜いた表現です。これでようやく記事にしようと思えました。

 

さて、なぜ株価が変化すると事業承継がスムーズに進むのでしょうか?

通常、中小企業の事業承継の際、純資産価額方式という方法で株式を評価します。

純資産価額方式というのは単純に言うと、会社の純資産を発行済株式数で割って、株価を算定する方法です。

例えば、純資産が700百万円(相続税評価額。簿価は50百万円)、発行済株式数が1000株の会社の場合には、株価は70万円(=700百万円÷1000株)となります。

そして、もしこの会社が中小企業投資育成株式会社に新たに300株を発行し、出資を受けたとしましょう。

このときに1株いくらで株式を発行するのかが重要なのです。

実は中小企業投資育成株式会社から出資を受ける際、1株いくらで株を発行すれば良いのか、つまり1株いくらと評価するかについて、法人税関係個別通達にて、以下のように公表されています。

評価額=1株あたり予想純利益 × 配当性向 ÷ 期待利回り

予想純利益や配当性向、期待利回りといったものの詳細はリンク先で確認していただくとして、仮に各数値が以下のようだったとします。

  • 予想純利益:9,000万円
  • 期待利回り:10%

あとは、配当性向が分かれば良いのですが、これは少し厄介です。

まず、1株あたりの予想税引前当期純利益を算定します。

1株あたり予想税引前当期純利益の算定

まずは1株額面50円と仮定します。

会計上の株価が50,000円(簿価純資産 / 株式数)なので、1,000分の1です。したがって、額面50円と仮定した場合の1株あたり予想税引前当期純利益は、予想税引前当期純利益を株式数で割ったものをさらに1,000分の1して、

90,000,000円 / (1,000 + 300)×1 / 1,000
=69円

となります。

株式の額面制度は2001年の商法改正で廃止されましたが、法人税関係個別通達はそれ以前に公表されたものなので、みなし額面を50円とすることで調整します。

配当性向の算定

そして、この69円と言う1株あたり予想税引前当期純利益を、法人関係個別通達に当てはめ、配当性向を算定します。

1株あたり配当額
=20円×20%+(50円-25円)×15%+(69円-50円)×10%
=10.65

1株あたり予想税引前当期純利益が69円なので、配当性向は

10.65 / 69円=15.43%

投資育成評価方式による評価額の算定

1株あたり予想税引前当期純利益と配当性向が分かりましたので、これを評価額の算式に当てはめます。

評価額
=(69円×15.43%) / 10%
= 106円

ただし、これはみなし額面50円の場合ですので、実際の額面である50,000円に戻すために1,000倍します。

評価額
=106円×1,000
=106,000円

新たに発行する株式数は300株でしたので、31.8百万円(=106,000円×300株)が出資されるということになります。

これを表にすると以下のようになります。

株主

増資前

増資

株数

増資後

株数

比率

株数

比率

社長

430

43.0%

430

33.1%

A氏

370

37.0%

370

28.5%

長男

10

1.0%

10

0.8%

B氏

190

19.0%

190

14.6%

投資育成㈱

+300

300

23.0%

合計

1,000

100.0%

+300

1300

100%

純資産
(相続税評価)

700百万円

+31.8百万円

731.8百万円

 

増資前は前述の通り株価は700,000円でした。

増資後の純資産は731.8百万円で株数が1,300株なので、純資産価額方式で算定すると、株価は562,923円(≒731.8百万円÷1,300株)に低下…いや、変化します。

しかも、増資前は現社長と長男で過半数に足りなかった持ち株比率も、増資後は中小企業投資育成株式会社も含めて56.9%(=33.1%+0.8%+23.0%)と過半数を取り戻しています(中小企業投資育成株式会社は基本的に社長や後継者の意思を尊重して議決権行使をします)。

ちょっと長くなってしまいましたが、これが、中小企業投資育成株式会社からの出資が、事業承継にも有効という理由です。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

中小企業投資育成株式会社から出資を受け、株価を変化させることで、事業承継にも効果を発揮すると言うことがお分かりいただけだと思います(こうして告白できて、僕もスッキリしました)。

もちろん新株発行だけでなく、会社が保有する自己株式の引受け先としても使えますよ。

皆さんの会社でも、中小企業投資育成株式会社の利用を検討してみてはいかがでしょうか?

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