生産性向上設備投資促進税制は先端設備と利益改善設備のどちらを選ぶ?【緊急連載第2回】

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生産性向上設備投資促進税制は先端設備と利益改善設備のどちらを選ぶ?

連載第1回「生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制利用に向けラストスパートを!」では、生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制の概観について説明いたしました。

下表の通りどちらも時限措置ですが、まるでボーナスといえるほどの優遇制度だということがお分かりいただけたと思います。

中小企業投資促進税制

 

生産性向上設備投資促進税制の対象となる資産に、「先端設備」(A類型)と「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(以下、利益改善設備)」(B類型)の2つがあることは連載第1回で説明したとおりです。

連載第2回となる本稿では、この「先端設備」(A類型)と「利益改善設備」(B類型)について、どちらを選択すればよいのか、それぞれを比較しながら解説したいと思います。

生産性向上設備投資促進税制に関する緊急連載【目次】

第1回 生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制利用に向けラストスパートを!

第2回 生産性向上設備投資促進税制は先端設備と利益改善設備のどちらを選ぶ?

第3回 生産性向上設備投資促進税制は即時償却と税額控除のどちらを選ぶ?

第4回 生産性向上設備投資促進税制を受けるための手続とは?

 

生産性向上設備投資促進税制の種類とメリット・デメリット

「先端設備」(A類型)と「利益改善設備」(B類型)のどちらを選択すべきかについて、まずは、連載第1回で示した表をもう一度見てみましょう。

③「先端設備」(A類型)と「利益改善設備」(B類型)の比較

「先端設備」(A類型)と「利益改善設備」(B類型)の比較-経済産業省パンフレットを基に作成

 

「先端設備」(A類型)のメリット

まずは「先端設備」(A類型)のメリットについて。

上表で「手続が簡単(自分で申請しなくて良い)」とあるように、この点が「先端設備」(A類型)の最大のメリットです。

具体的にやらなければいけないことは、「業者からリストを取り寄せ、資産を購入後「工業会等の証明書」を発行依頼する」ということだけです。

下図をご覧下さい。

「先端設備」(A類型)のスキーム図-中小企業庁「中小企業投資促進税制パンフレット」より

「先端設備」(A類型)のスキーム図-中小企業庁「中小企業投資促進税制パンフレット」より

 

左の青い枠組みで「設備の取得等を行う者」とあるのが事業者である皆さんです。

皆さんのやることは①の「証明書発行依頼」と⑤の「税務申告の際、確定申告等に証明書を添付」することだけです。

②や③を見ると分かるように、ある設備が「先端設備」(A類型)に該当するかどうかは、工業会等が判断し、メーカーに証明書を発行しますので、皆さんが何かをやらなくてはならないわけではありません。

メーカーからの証明書の受領タイミングも、取得日の前でも後でもかまいません。実際の確定申告時までに証明書を取得しておけばOKです。

 

「先端設備」(A類型)のデメリット

一方、「先端設備」(A類型)のデメリットは、「A先端設備のリストにあるものしか対象にならないため、必要な資産がリストにない可能性が高い」という点です。

メーカーが工業会等に申請したものしか「先端設備」(A類型)設備の対象資産になりませんので、皆さんに必要な資産が対象資産になっていない可能性が高いといえます(節税のため、必要ない設備投資をしたのでは本末転倒です)。

そのため、リストに必要な資産がない場合には「利益改善設備」(B類型)の利用を考えることになります。

 

「利益改善設備」(B類型)のメリット

ではその「利益改善設備」(B類型)ですが、メリットはズバリ「要件さえクリアすれば色々な資産を丸ごと対象として適用できる」という点でしょう。

「利益改善設備」(B類型)は「先端設備」(A類型)と違い、自分で要件を満たす必要がありますが、対象となる資産の範囲をかなり広くできます。

そのため、必要な資産を優遇措置を使って取得することが可能となります。

 

「利益改善設備」(B類型)のデメリット

対象資産の範囲が広い反面、生産性向上設備投資促進税制で求められる要件をクリアしていることを、自分で証明しなければならないため、その点がデメリットといえます。

生産性向上設備投資促進税制で求められる要件とは、投資利益率15%以上(中小企業者等であれば5%以上)を達成するような投資計画を作成し、経済産業局へ申請するというものです。

さらに、この時作成する投資計画は、経済産業局へ申請する前に、公認会計士または税理士にチェックしてもらう必要があります。

この要件は少し大変そうなのですが、裏を返せば、公認会計士や税理士に協力してもらって投資計画を作成すればよいということですので、実はそれほど大変な要件でもありません。

公認会計士や税理士へ支払う報酬についても、節税額などを考えればメリットのほうが大きくなることが多いでしょう。

 

「利益改善設備」(B類型)の注意点

生産性向上設備投資促進税制で「利益改善設備」(B類型)を取得しようとする場合、以下の点に気をつける必要があります。

 

(注意点1)投資利益率15%以上(中小企業者等であれば5%以上)が必要

前述の通り、その資産を取得することにより、投資利益率が15%以上(中小企業者等であれば5%以上)となる必要があります。

投資利益率は以下の算式で求めます。

投資利益率=「営業利益+減価償却費」の増加額÷設備投資額

この算式については少し説明が必要だと思います。

まず、以下の点が前提となります。

  1. 減価償却費とは企業会計上の減価償却費を指す
  2. 増加額は、設備取得等をする年度の翌年度以降3年間の平均額

1.について、減価償却費は企業会計上のものを使用するため、生産性向上設備投資促進税制による即時償却(や特別償却)は考慮しません。

また、2.については3年間の平均額を使用するということですから、投資計画も3年分でよいということになります。

それでは、投資利益率の求め方について、その他の注意点も含めて数値例で説明したいと思います。

《数値例》

200万円の資産を取得。耐用年数は4年。

取得した資産を活用することで年間50万円の消耗品費が削減できると予想される。

この場合の投資利益率を計算したいと思います。

Step 1

まず、営業利益がどれくらい増加するかを計算します。

年間で50万円の消耗品費が削減されるのですから、3年間で150万円営業利益が増加します。

一方、設備投資をしたことにより減価償却費と固定資産税が増えてしまいます。減価償却費は3年間で150万円(=200万円÷4年×3年)、固定資産税は3年間で4万円だとすると、3年間で154万円営業利益が減少します。

 

Step 2

次に減価償却費の増加額を計算します。

Step 1にあるように減価償却費は3年間で150万円増加します。

なお、投資利益率の算定において、減価償却費を営業利益にプラスするのは、Step 1の営業利益の算出過程で生じる減価償却費分を足し戻し、キャッシュ・フローベースの増加をとらえるためです。

 

Step 3

Step 1、Step 2で求めた数値を投資利益率の算式に当てはめ、投資利益率が15%以上(中小企業者等であれば5%以上)であることを確認します。

営業利益や減価償却費の増加額は3年間の平均値であることに注意してください。

投資利益率 = {(150 / 3-154 / 3)+(150 / 3)} ÷ 200

= 24.4%

 

以上により投資利益率も要件である15%(中小企業者等であれば5%)をクリアしていることが確認できました。

なお、今回は設備投資により経費削減が予測されるケースでしたが、売上高が増加する投資計画もあると思います。

売上高の増加は、販売単価×増加販売数量で求められますので、販売単価や販売数量の増加を予測しなければなりません。

販売単価については一世代前のモデルの販売単価を基に算出し、販売数量の増加予測には、取締役会などの会議資料を用いる方法などが考えられます。

 

(注意点2)既に購入している資産は対象外

「先端設備」(A類型)はメーカーのリストに掲載されているものは、既に工業会等から証明書が発行されていますので、対象設備かどうかを気にする必要はありません。

しかし、「利益改善設備」(B類型)の場合、各事業者にあわせて投資計画を作成し、その事業者にとって投資利益率が高いと判断されたものが、生産性向上設備投資促進税制の対象となります。

そのため、「利益改善設備」(B類型)では、投資計画が提出され、経済産業大臣の確認書が発行されてから購入する資産が対象なります。

くれぐれも経済産業大臣の確認書が発行される前に資産を購入しないように注意してください。

 

生産性向上設備投資促進税制の対象資産

それでは生産性向上設備投資促進税制の対象資産について確認しましょう。

すでに述べている通り、「先端設備」(A類型)と「利益改善設備」(B類型)では対象資産が異なりますので注意してください。

なお、どちらの対象資産にも共通する要件は以下の通りです。

  1. 国内への投資であること
  2. 中古資産や貸付資産でないこと
  3. 生産等設備を構成するものであること(対象業種には制限は無い)

3.については、誤解されやすいので追記しておきます。生産性向上設備投資ですので、付加価値を生むことによる収益の獲得に直接関係しない設備は対象外とされています。

つまり、生産や販売、役務提供のための設備なら対象資産となりますが、それ以外の業務遂行上間接的に必要とされる設備は対象外ということです。

具体的には本店の機能しかない建物や寄宿舎、事務用器具備品、福利厚生施設などは対象外となります。

しかしながら、生産性向上設備投資促進税制は製造業でなければ利用できないというわけではありませんので、この点は勘違いなさらないでください。対象業種には制限はありません。

また、購入設備のみではなく、自社製作した設備も対象資産となります。この点もご注意下さい。

それでは早速、それぞれの対象資産を見ていきましょう。

 

「先端設備」(A類型)の対象資産

「先端設備」(A類型)の対象資産となるには、次の要件をいずれも満たす必要があります。

  1. 最新モデルであり、生産性が年平均1%以上向上していること
  2. 一定の価額以上であること
    ・機械装置: 160万円以上
    ・工具及び器具備品: 120万円以上  (単品30万円以上かつ合計120万円)
    ・建物: 120万円以上
    ・建物附属設備: 120万円以上  (単品60万円以上かつ合計120万円)
    ・ソフトウエア: 70万円以上  (単品30万円かつ合計70万円)

1.については、各メーカーが要件をクリアしていると思いますので、2.の金額基準だけ注意しておけば良いでしょう。

 

具体的には以下のようなものが対象資産となります。

「先端設備」(A類型)の対象資産

「先端設備」(A類型)の対象資産-経済産業省「生産性向上設備投資促進税制について」より

 

「利益改善設備」(B類型)の対象資産

「利益改善設備」(B類型)の対象資産となるには、次の要件をいずれも満たす必要があります。

  1. 投資利益率が15%(中小企業者等は5%)以上であること
  2. 一定の価額以上であること
    ・機械装置: 160万円以上
    ・工具及び器具備品: 120万円以上  (単品30万円以上かつ合計120万円)
    ・建物及び構築物: 120万円以上
    ・建物附属設備: 120万円以上  (単品60万円以上かつ合計120万円)
    ・ソフトウェア: 70万円以上  (単品30万円かつ合計70万円)

 

前述の通り、要件1.についても自ら証明し、公認会計士や税理士の事前確認を受ける必要がある点が、「先端設備」(A類型)との違いです。

2.の金額基準については「先端設備」(A類型)と同じですが、構築物が加わっている点が異なります。

なお、合計額が基準額以上かどうかは、「工具」「器具備品」といった設備種類単位で判定します(これは「先端設備」(A類型)でも同様です)。

したがって、例えば、冷蔵庫が70万円、検査機器が60万円で器具備品の合計額が130万円となる場合は対象となります。

なお、器具備品のうち、「サーバー用の電子計算機については、情報通信業のうち自己の電子計算機の情報処理機能の全部又は一部の提供を行う事業を行う法人が取得又は製作をするものを除く」という点は、「先端設備」(A類型)と同じです。

 

中小企業投資促進税制の対象設備との関係

中小企業投資促進税制は生産性向上設備投資促進税制に上乗せして優遇措置を受けることができる制度です。(詳細は連載第1回目「生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制利用に向けラストスパートを!」をご確認下さい)。

対象資産は生産性向上設備投資促進税制とほぼ同じですが、「先端設備」(A類型)における、ソフトウェア組込型機械装置については、最新モデルだけでなく、一代前のモデルも対象となります。

あらかじめプログラムが組み込まれた専用のコンピュータが搭載され、そのコンピュータからの指令に基づいて作動する機械装置のこと

 

上乗せ措置である中小企業投資促進税制の対象資産との関係を図示すると、以下のようになります。

生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制の対象資産の関係

生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制の対象資産の関係-経済産業省「生産性向上設備投資促進税制について」より

少し複雑ですが、赤い枠内が生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制を併用できる資産です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

「先端設備」(A類型)か「利益改善設備」(B類型)かを決めるに当たって、必要な設備が対象資産になっているかどうかがポイントです。少し話が込み入りましたが、要は、「先端設備」(A類型)であれば、メーカーのリストから必要な設備を選択して「工業会等の証明書」を受け取る、「利益改善設備」(B類型)であれば、公認会計士や税理士と協力して投資計画を作成し、経済産業局に申請後設備を購入する、というだけです。

対象設備かどうかも、「先端設備」(A類型)であれば、リストの中から選べば良いだけですし、「利益改善設備」(B類型)なら投資利益率をクリアさえすればほぼ認められます。

対象設備かどうか判断に迷っているうちに、優遇措置を利用できる期限が過ぎてしまわぬよう、まずは公認会計士や税理士に相談してみましょう!

 

生産性向上設備投資促進税制についてのご案内 ~設備投資をお考えの方へ~

民間投資活性化のための税制会税大網の決定により、生産性の向上につながる設備投資を促進するための税制措置である「生産性向上設備投資促進税制が創設されました。

当該税制の適用期間は2017年(平成29年)3月31日までと限られておりますので、設備投資を検討されている方は、積極的に利用されることをお勧め致します!

 さらに!

中小企業者の方はには生産性向上設備投資促進税制とは別に、「中小企業投資促進税制(中促)」を併用することで減税効果がアップします!

 設備投資をお考えの方は、是非一度お問い合わせください。


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