生産性向上設備投資促進税制では即時償却と税額控除のどちらを選ぶ?【緊急連載第3回目】

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生産性向上設備投資促進税制は即時償却と税額控除のどちらを選ぶ?

さて、全4回に渡ってお送りしている生産性向上設備投資促進税制の解説ですが、今回は第3回目となります。

これまでお話してきた生産性向上設備投資促進税制のメリットをまとめると、以下のようになります。

生産性向上設備投資促進税制

  • 2014年1月20日~2016年3月31日 ⇒取得価額全額を即時償却または取得価額の5%の税額控除(建物・構築物は3%)
  • 2016年4月1日~2017年3月31日 ⇒取得価額の50%の特別償却(建物・構築物は25%)または取得価額の4%の税額控除(建物・構築物は2%)

表にすると以下の通りです。

①生産性向上設備投資促進税制

さらに、生産性向上設備投資促進税制には中小企業投資促進税制を上乗せできるのでした(建物・構築物は上乗せ措置の対象外)。

つまり、中小企業投資促進税制の上乗せを加味するとこうなります。

中小企業投資促進税制を上乗せした場合の生産性向上設備投資促進税制

  • 2014年1月20日~2016年3月31日 ⇒取得価額全額を即時償却または取得価額の10%の税額控除(建物・構築物は3%)
  • 2016年4月1日~2017年3月31日 ⇒取得価額全額を即時償却(建物・構築物は25%)または取得価額の10%の税額控除(建物・構築物は2%)

表にすると以下の通りです。

中小企業投資促進税制

 

これまでの内容を復習いただけたでしょうか。

本稿では、実際に生産性向上設備投資促進税制(と中小企業投資促進税制)を利用することにされた事業者の方向けに、即時償却・特別償却と税額控除のどちらを選択すべきかについてアドバイスさせていただきます。

節税しながら資産を新品に取替え、業績アップできるまで、あともう少しです!

生産性向上設備投資促進税制に関する緊急連載【目次】

第1回 生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制利用に向けラストスパートを!

第2回 生産性向上設備投資促進税制は先端設備と利益改善設備のどちらを選ぶ?

第3回 生産性向上設備投資促進税制は即時償却と税額控除のどちらを選ぶ?

第4回 生産性向上設備投資促進税制を受けるための手続とは?

 

 

即時償却や特別償却と税額控除との違い

即時償却・特別償却と税額控除はある一つの資産に対して併用することは認められていませんので、どちらを適用するかを選択しなければなりません。そのためには、それぞれどのような節税効果があるのかを知らなければなりません。

 

即時償却・特別償却の場合

まずは即時償却について考えてみましょう(特別償却の場合も考え方は同じです)。

通常、固定資産を取得した場合、以下のように耐用年数に渡って減価償却をしていきます。

④減価償却シミュレーション

上図では毎年100万円の減価償却費が計上されています(決算月に取得しているため、1年目は1ヶ月分、6年目は11ヶ月分の月割減価償却費になります)。

ソフトウェアを取得したことにより増加した減価償却費は、その分利益を圧縮しますので、減価償却費に税率を乗じた30万円税金が少なくなります。1年目は1か月分しか減価償却していませんので節税額も少なくなっていることに注目してください。

一方、即時償却をした場合のスケジュールと比較してみると以下のようになります。

④(2)生産性向上設備投資促進税制ー即時償却の場合

生産性向上設備投資促進税制を利用した場合には、資産の取得が決算月であろうとも、その期に即時償却できますので、1年目の節税額は150万円になります。

一方で、資産の耐用年数を通じ合計した減価償却費、節税額は通常の減価償却をした場合でも生産性向上設備投資促進税制を利用した場合でも同額となります(表の一番右、「合計」の列をご覧下さい)。

つまり生産性向上設備投資促進税制を利用し、即時償却したとしても、資産の耐用年数を通じた節税額に変わりはないということです。

1年目だけを見ると、通常の減価償却の場合には節税額が少ないため、利益(課税所得)が圧縮しきれず、課税されることが多いと思いますが、即時償却を使うと節税額が大きくなり、十分に利益圧縮されるため、課税されないケースが多くなります。

もちろん2年目以降はこの関係が逆転し、通常の減価償却でよりも、生産性向上設備投資促進税制を利用したほうが税金は多くなります。

「じゃあ、生産性向上設備投資促進税制を使っても使わなくても同じじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは正解ではありません。この点について説明いたしましょう。

 

数値例-通常のケース

仮に、設備投資をしなかった場合の課税所得が毎期500万円だったとして、設備投資後の税金額が、通常の減価償却と即時償却でどのように異なるのかを見てみましょう(実際には生産性向上設備投資促進税制は、生産性が向上するというのが前提ですので、毎期の課税所得は増加していくと思いますが、本稿において生産性が向上することによる課税所得の増加は考慮外とします)。

④(3)生産性向上設備投資促進税制と減価償却に比較 通常の場合

ソフトウェアの耐用年数を通じた結果である一番右の「合計」の列をご覧下さい。

耐用年数を通じた場合には、減価償却費と即時償却額は同額になりますので、設備投資後の課税所得や税金の額も同じになります。

違うのはその発生パターンです。

通常の減価償却では、税金の額は1年目は148万円、その後5年目までは120万円、6年目は122万円と、耐用年数を通じて毎期平均して税金を支払うことになります。

一方、生産性向上設備投資促進税制の即時償却を利用した場合には、1年目の税金はゼロとなり、その後150万円ずつ支払っています。

つまり、即時償却をした場合には、1年目に支払うべき税金を2年目以降に繰り延べているといえます。このような性質から、即時償却には「課税の繰延」効果があると言えます。

「課税の繰延」を「節税」と呼んで良いかどうかには賛否両論あると思います。

とはいえ、単なる課税の繰延だからといって、それが即ち節税ではないと結論付けるのは早計です。

上の例では2年目以降も十分に課税所得が生じるケースで検討しましたが、仮に何らかの事情で2年目以降経営が悪化してしまった場合を考えてみましょう。

④(3-1)生産性向上設備投資促進税制と減価償却の比較 利益減少

このケースでは(少し極端ですが)2年目以降徐々に経営が悪化し、課税所得が少なくなっています。

課税所得がゼロ以下となった場合には、税金の支払いはありませんので、このような場合には即時償却による課税の繰延であっても、結果的にソフトウェアの耐用年数を通じた税金の額を減らすことができます。

現実問題として、会社を経営していれば、次年度に急激に経営が悪化することも少なくありません。そのような場合であっても、課税を繰延べることで、税金支払による負担を軽減することができます。
この課税の繰延による効果は、繰越欠損金を繰越期限内に消化できるくらいまで業績が回復しない限り変わりません。

逆に、課税の繰延をしたにもかかわらず、税金の支払額が変わらなかった場合というのは、結果として十分な課税所得を生じた、つまり経営成績が良かったということであり、喜ばしいことなのです。

むしろ、単に課税の繰延にしかならないといって、利用できる節税方法を手放した瞬間、将来に対して不要なリスクを取ることにもなるのです。

 

数値例-1年目の利益が大きいケース

その他にも、即時償却によって課税を繰延べるメリットがあります。

以下の表をご覧下さい。

④(4)生産性向上設備投資促進税制と減価償却の比較 1年目利益大

先ほどの例と異なるのは、何らかの事情により1年目に予想外の課税所得が生じていることです。

予想外の課税所得が生じた場合に、税金額が大きくなるのを防ぐために、固定資産を取得する節税方法が良く使われますが、上記の例のように決算月に取得した場合、通常は1ヶ月分しか減価償却できず、効果が限定的です。

しかし、そのような場合でも生産性向上設備投資促進税制を利用し即時償却することで、設備投資後の課税所得を圧縮し、予想外の課税所得が生じた1年目の税金を少なくすることができます。

つまり、即時償却によって課税を繰延べることで、急に生じた多額の税金支払いを回避することができるのです。

 

数値例-利益が少ないケース

さらに、予想外の利益が生じていなくとも、青色申告をしている方は欠損金の繰越控除が使えるため、やはり即時償却が有効になります(そもそも青色申告をしていないと生産性向上設備投資促進税制は使えません。この税制は、青色申告をしている優良な納税者だけに認められた特権なんです)。

下の表をご覧下さい。

④(5)生産性向上設備投資促進税制と減価償却の比較 利益小

今回は、設備投資をしなかった場合の課税所得が、毎年200万円と少なめです。

その場合でも、通常の減価償却をした場合には1年目に58万円の税金がかかるところ、即時償却した場合には、税金はゼロ円になっています。

即時償却額が課税所得の額を上回り、設備投資後の課税所得が-300万円となったためです。

このとき生じた-300万円は欠損金とよばれ、その後の9年間で生じた課税所得と相殺することができます。これが欠損金の繰越控除と呼ばれるものです。

上の例では、1年目で生じた-300万円の欠損金を、2年目の課税所得に200万円、3年目の課税所得に100万円ぶつけています。そうすることによって、2年目の税金はゼロ、3年目の税金も30万円まで少なくすることができています。

こうして支払いを先送りすることで、キャッシュフローの健全化に役立ちます。

 

税額控除の場合

即時償却の効果は「課税の繰延べ」、でしたが、税額控除は税金そのものを少なくする「税額の免除」効果があります。

これだけ聞くと、税額控除のほうがお得そうですが、早とちりは厳禁です。

即時償却と税額控除のどちらが良いかを判定する前に、まずは通常の減価償却をした場合と税額控除をした場合を比べてみましょう。

 

数値例-通常のケース

⑤中小企業投資促進税制と減価償却の比較 通常

上表では、生産性向上設備投資促進税制に中小企業投資促進税制を併用し、10%の税額控除を利用しています。

即時償却と異なり税額控除では、ソフトウェアの耐用年数を通じた税金の合計額が750万円から700万円に減少していることが分かると思います。

この、税金減少の絶対額50万円は、ソフトウェアの取得価額500万円の10%だけ税額控除されたためです。

なお、税額控除が1年目30万円、2年目20万円となっているのは、税額控除は法人税額の20%までという限度額があるためです。そのため1年目は30万円(=148万円×20%(四捨五入))までしか税額控除できず、残りの20万円(=50万円-30万円)は翌期に減額しています。

このように、税額控除には法人税額の20%までという限度額があり、法人税額の20%を超過した分は、翌事業年度に繰越すことができるという点にも注意が必要です(即時償却による欠損金と異なり、繰越しは翌事業年度までです)。

 

数値例-1年目の利益が大きいケース

では、先ほどと同じように1年目で予想外に課税所得が生じた場合を見てみましょう。

⑤(2)中小企業投資促進税制と減価償却の比較 1年目利益大

この場合は、税額控除の上限額に引っかかることなく、1年目で50万円節税できています。

ここでも、通算で見ると、通常の減価償却をした場合の税金額950万円から50万円減り、900万円の税金額となっていますね。

 

数値例-利益が少ないケース

次は課税売上が少ないパターンです。

⑤(3)中小企業投資促進税制と減価償却の比較 利益小

この場合、通算で見た税金額は18万円(=210万円-198万円)しか安くなっていません。

これは1年目、2年目の課税所得がなく、税額控除のうち切り捨てた部分があるためです。

税額控除は1年しか繰越せませんので、1年目、2年目に十分な課税所得がなければ最大限に活用することはできません。

 

で、即時償却と税額控除どちらを利用するのが良いのか?

即時償却と税額控除の違いをご理解いただいたところで、ようやくどちらを適用すればよいのかに話を移せます(長かったですね…)。

これまで通常ケース、1年目の利益が大きいケース、利益が少ないケースという3つのケースで検証してきましたので、ここでもその3ケースで即時償却と税額控除を比べてみたいと思います。

 

数値例-通常ケース

まずは、通常ケース(課税所得500万円)です。使っている数字はこれまでと同じです。

違いは、通常の減価償却費をした場合と、即時償却や税額控除をした場合を比べているのではなく、即時償却をした場合と税額控除をした場合とを比べていますので、注意してください。

⑥生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制の比較 通常

上が即時償却、下が税額控除です。

耐用年数を通算した税金の合計額は税額控除の方が少なくなっていますね。これは即時償却が課税の繰延であるのに対し、税額控除が税金の減額であることによるものですから、当然の結果です。

しかし、税額控除の方が通算した税金額が安いからといって、「税額控除を採用!」では危険です。

ここでは1年目の税金額に注目しましょう。即時償却ではゼロ円に対し、税額控除では118万円となっていますよね。

特に1年目は設備投資をしていますから、一時的にキャッシュフローが悪化している可能性があります。この状態で税金を追加で118万円払わなきゃいけないとなった場合には、資金が枯渇しかねません。

自社のキャッシュフローを加味し、十分な資金があるのであれば税額控除が良いでしょうが、そうでなければ即時償却を選択した方が良いでしょう。

設備投資をして資産を新品に買い換えるとともに、税金の支払いを遅らせ、キャッシュフローを悪化させないという即時償却のメリットは大きいと言えます。

 

数値例-1年目の利益が大きいケース

では、次に1年目に予想外の課税所得が生じてしまった場合です。

⑥(2)生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制の比較 1年目利益大

この場合も、資産の耐用年数を通算した税金額は、税額控除を選択した方が少なくなっています。

税金の支払パターンは、即時償却を利用した場合は毎年150万円で一定であるのに対し、税額控除では1年目に248万円もの支払いがあります。

しかし、このケースでは1年目に多額の課税所得があり、それに伴い手持ちの資金も多い可能性があります。もしそうであれば、資金が潤沢なときに、税金を支払ってしまい、絶対的な税金額を少なくすることができる税額控除を選択した方が良いかもしれません。

 

数値例-利益が少ないケース

では次に、十分な課税所得がないケースで考えてみましょう。

⑥(3)生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制の比較 利益小

このケースでは、資産の耐用年数を通じた税金の支払額を比べても、12万円(=210万円-198万円)しか違いがありません。

税額控除を選択した場合、資産の取得価額の10%(この場合50万円)の節税効果があるはずなのですが、前述の通り、税額控除には法人税額の20%までという上限があり、これを超過した部分についても、翌事業年度までしか繰越すことができないためです。

そのため本ケースのように1年目、2年目の課税所得が十分になく、切り捨てる部分が出てくる場合には、税額控除のメリットを最大限享受することができません。

また、課税所得が少ないなか、設備投資をしていますので、キャッシュフローにそれほど余裕はないと考えられます。

これらを勘案すると、課税の繰延効果によって税金の支払いを遅らせることのできる、即時償却を選択するのが賢明かと思われます。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は数値例を豊富に用いて説明しましたので、即時償却・特別償却と税額控除のそれぞれのメリットやどちらを選択すべきかについて理解が深まったと思います(ちょっと、大変だったとは思いますが…)。

もちろん、どちらを選択すべきかについては、常に今回の事例のように単純に決定できるものでは無いため、税理士や会計士に相談することをお勧めします。※

※実は、即時償却・特別償却と税額控除は、例えば、機械Aについては即時償却、機械Bについては税額控除などと、同じ資産分類内であっても設備単位で使い分けができたりもします。これにより選択肢はさらに増え、御社にとって最適な意思決定も変わってくると思います。

また、即時償却・特別償却によって単純に費用化するのではなく、特別償却準備金制度を利用することで、税法上は損金に算入しながら、損益計算書上は費用としない、といった方法も可能です(つまり、税法上の課税所得を減らしつつも、会計上の利益は減らさない方法があるということです。)

専門家とタッグを組んで、生産性向上のために設備の入れ替えをしながら、節税までできる、生産性向上設備投資促進税制と中小企業投資促進税制を活用しましょう!

 

生産性向上設備投資促進税制についてのご案内 ~設備投資をお考えの方へ~

民間投資活性化のための税制会税大網の決定により、生産性の向上につながる設備投資を促進するための税制措置である「生産性向上設備投資促進税制が創設されました。

当該税制の適用期間は2017年(平成29年)3月31日までと限られておりますので、設備投資を検討されている方は、積極的に利用されることをお勧め致します!

 さらに!

中小企業者の方はには生産性向上設備投資促進税制とは別に、「中小企業投資促進税制(中促)」を併用することで減税効果がアップします!

 設備投資をお考えの方は、是非一度お問い合わせください。


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