特定支出控除でサラリーマンのスーツも経費になる!のか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

特定支出控除

給与所得者の特定支出控除とは

暑い日が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
さて、本日は「サラリーマンに朗報!」などと巷でもてはやされている、給与所得者の特定支出控除について解説してみたいと思います。

聞いたことありますか?給与所得者の特定支出控除。
これは、給与所得者、つまりサラリーマンなどの方が、ある条件に該当する支出をした場合、その一年間の合計額が給与所得控除額の1/2(最高125万円)を超える場合に、その超える部分の金額を給与所得控除後の給与等の金額から控除できるという制度です。
この控除できる可能性のある支出のことを特定支出と言うのですね。

図で示すと以下のようになります(通勤費などの各費用の説明は後述いたします)。

特定支出控除の図

サラリーマンの方にはもともと給与所得控除と言うものがあり、所得税額は「{(給与等-給与所得控除)-所得控除※}×所得税率-税額控除」で決まるというのが基本です。
所得控除については「保存版-迷える個人事業主に贈る、確定申告の所得控除全項目」を、税額控除については「保存版-迷える個人事業主に贈る、確定申告の税額控除全項目」をご覧下さい。個人事業主の方むけの記事ですが、考え方は同じです。

しかし、これに特定支出控除が加わると「{(給与等-給与所得控除-特定支出控除)-所得控除}×所得税率-税額控除」となるわけです。
税率をかける前の金額を小さくすることで節税になるというわけです。

 

特定支出の範囲

特定支出が多ければその分節税額も大きくなるということが分かれば、特定支出の範囲を知りたくなってきますよね?

それでは早速その範囲を確認しましょう。

特定支出には次のようなものが該当します。

  1. 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
  2. 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
  3. 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
  4. 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
    平成25年分以後は、弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となりました!
  5. 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
  6. 次に掲げる支出で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの(勤務必要経費) (その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)
    (1) 書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
    (2) 制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
    (3) 交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

これらに該当した場合、その合計額が給与所得控除の1/2を越える部分について、特定支出控除として給与等から控除できるというわけです。

ただし、以下の2つの点に注意が必要です。

  1. 特定支出に該当するためには、会社などの給与の支払者が条件に合うと証明したものでなければなりません。
  2. 給与の支払者から補填される部分(かつ、その補填される部分に所得税が課税されていないとき)は特定支出とはなりません。

特定支出控除は給与所得者が職務を遂行する上で必要な支出を所得から控除することを認める制度です。この「職務を遂行する上で必要」かどうかを給与所得者本人に判定させてしまうと、客観性が損なわれます。
そこで、その判断を会社にしてもらい、会社が条件に合うと証明したものだけが特定支出となるということです。

また、給与所得者が立替払いした支出について、会社が職務上必要だと判断し補填した場合には、給与所得者の負担はないわけですから特定支出とはなりません。

これらの注意点を踏まえて、ざっと特定支出の範囲を見ていくと、1.の通勤費については通常は会社から支給されていますので、注意点B.によって特定支出からは除かれることが多いと思います。
ただし、アルバイトやパートの方ですと、通勤費を自腹で払っているケースもあると思いますので、特に遠方から通ってる場合などで給与所得控除の1/2を超える場合には特定支出となりますよ。

2.~5.についても、通常は会社から支給されていると思いますので、そのような場合は特定支出とはなりません。

特定支出となるとしたら、単身赴任中の方が自宅に帰る際の費用(車の場合にはガソリン代も)を自腹で払っている場合の帰宅旅費や、平成25年分以後の弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費でしょうか。

とはいっても、特定支出控除の額は給与所得控除額の1/2を超えた部分ですので、ある程度の金額がなければ控除することはできません。
給与所得控除額は年収が高いほど多くなりますが、最低控除額は65万円ですので、その半分32万5千円超の支出がだけが対象です。

特定支出として控除される可能性が最もありそうな資格取得費ですが、32万5千円超の資格取得費ってなんでしょうかね?

弁護士や公認会計士、税理士などの資格取得には複数年を要することが通常だと思います。そして、それらの資格取得のための講座も年をまたがるものが多いと思います。

そういった、複数年にわたる講座の授業料を払った場合、特定支出の額としては、それぞれの年に対応する部分、つまり授業数などで各年に按分して、開講された部分の金額だけが該当しますのでさらにハードルは上がります。
なお、入学金など入学に際して一括で支払うものは、支払った年に一括して特定支出の額としてOKです

税理士試験は年に1科目か2科目ずつ受験するのが普通だと思いますので、そうなると資格専門予備校に32万5千円を超える講座はあまりないかもしれません。

その点、司法試験の場合は、法科大学院の修了が弁護士の資格を取得するための一般的な手段とされていますので、法科大学院に係る支出は特定支出となります。
法科大学院の授業料が32万5千円以下ということはあまりないでしょうから、これだと特定支出となる可能性は高そうです。

一方で公認会計士試験の場合の、会計大学院(アカウンティングスクール)に係る支出についてはどうでしょう。
会計大学院は修了することで、公認会計士試験の一部科目を免除はされるのですが、法科大学院とは異なり、受験資格を得るための支出ではないため、特定支出とはなりません。
ですが、公認会計士試験は資格専門予備校の授業料も高額な傾向があるため、特定支出となる可能性は高いといえます。

言い忘れてしまいましたが、税理士試験に話を戻すと、税法や会計学に関する研究により修士の学位を取得した場合には、税理士試験の一部科目を免除されますが、これも受験資格を得るための支出ではないため、公認会計士試験における会計大学院と同様に特定支出とはなりませんのでご注意ください。

6.の勤務必要経費については平成25年分以後のものは、特定支出の対象となります。
これについても(1)図書費や(3)交際費等については通常は会社が負担しているでしょうから、注目は6の(2)衣服費ですね。

ここに「勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用」とありますので、「サラリーマンのスーツ代も経費にできる!」と盛り上がっているわけです。

例えば、社内規定などでスーツの着用を義務付けられている場合だと、スーツの購入費用は職務の遂行に直接必要なものといえると思います。 あとは、これを会社に認めてもらうだけなのですが、これが意外とハードルが高いのではないでしょうか。
6.の勤務必要経費は平成25年度になってようやく認められた制度ですので、会社としてもどのような経費を職務上必要とするかの規定が整備されていないことが多いと思います。
そのような中で、個別に勤務必要経費の証明書を発行するということは難しいと思いますので、まずは勤務必要経費についての社内規定の整備を提案するということが現実的な方法となるでしょう。

ちなみに、スーツ着用を義務付ける社内規定がない場合であっても、研修などでスーツ着用が必要との説明を受けているときや、スーツ着用が慣行であるときなどは、特定支出となります。
もちろん、衣服はスーツに限らず、作業着や制服なども同様に考えて構いません。

ただし、6.の勤務必要経費については特定支出とできるのは図書費、衣服費、交際費等を合わせて65万円までとなっていますので、この点は注意が必要です。

 

特定支出控除額の計算

それでは、特定支出として実際いくらが控除できるのかを計算してみましょう。

モデルケースとして源泉徴収票の説明のときにも出てきていただいた、ビズ場ビズ夫さんに再登場してもらいます。

 

ビズ夫

  • 氏名 ビズ場 ビズ夫
  • 年齢 45歳
  • 源泉徴収票の記載額
    支払金額:720万円
    給与所得控除後の金額:528万円
    所得控除の額の合計額:176万円(特定支出控除は含まない)
    源泉徴収税額:282,300円

 

特定支出が無い場合

この段階ではビズ夫さんには特定支出はないものとします。

さて、冒頭で述べた所得税額の算定式は以下のようなものでした。

{(給与等-給与所得控除)-所得控除}×所得税率-税額控除

この式の「給与等」には源泉徴収票上の支払金額(いわゆる額面金額)が対応します。

そこからまずは給与所得控除を差し引くのですが、ビズ夫さんの給与所得控除の額は源泉徴収票から192万円(=支払金額:720万円-給与所得控除後の金額:528万円)と計算できます。

手元に源泉徴収票が無い場合は、下表で給与所得控除の額を計算してください(正確には、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、こちらの「別表第五 年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使います)。

給与所得控除

国税庁HPより

念のためこの表からも計算しておくと、年収720万円のビズ夫さんの給与所得控除は「収入金額×10%+1,200,000円」から、192万円と計算されますね。

その他の所得控除が176万円なので、課税される所得金額は352万円(=720万円-192万円-176万円)となり、これをもとに所得税額を計算すると、282,300円となります(詳しい計算過程は「うわっ…私の年収(から計算される源泉徴収税額)高すぎ…?」をご覧下さい)。

 

特定支出がある場合

さて、次に特定支出がある場合を考えて見ましょう。

ビズ夫さんに特定支出となるものが120万円あったとします。

特定支出控除となるのは、給与所得控除額の2分の1である96万円(=192万円÷2)を超える部分ですので、24万円(=120万円-96万円)が控除額となります。

この場合、課税される所得金額は328万円(=720万円-192万円-24万円-176万円)となり、所得税額は235,300円と計算されます。

これを特定支出が無い場合と比べると、所得税だけで47,000円節税できたことになります。

さて、この47,000円を多いと思うか少ないと思うかは読者の皆さんに委ねますが、今回の例でビズ夫さんは120万円の特定支出があったのでしたね。
これは毎月10万円を仕事上の経費として自腹を切っているということです。毎月10万円自腹を切るのも大変ですが、それでも47,000円しか節税できないということです。

サラリーマンの場合、特定支出控除のほかに給与所得控除もありますので一概には比較できませんが、個人事業主の場合には支払った120万円全額が経費となりますし、特定支出控除のような限度額(全体で125万円、6.の勤務必要経費は65万円が限度額です)もありませんから、年47,000円の節税では何だか物足りない気もしてしまいます。

 

特定支出控除を受けるための手続き

さてさて、とはいえ、せっかく支出しているのですから、少しでも節税しない手はありません。

ここでは、特定支出控除を受けるための手続きを説明します。

結論から言えば、特定支出控除を受けるには確定申告が必要です…

ここまで黙っていてすみません。言わなきゃ言わなきゃと思ってたんですが、最後まで読んで欲しくて、なかなか言い出せなかったんです。
でも、確定申告もそんなに難しくはありませんよ。

確定申告は、確定申告書第二表の「特例適用条文等」欄に「所法57の2」と特定支出の合計額を記入して、以下の書類を添付するのみです。なお、3.と5.については添付せずとも、提示するだけでよいとされています。

  1. 給与所得の源泉徴収票
  2. 特定支出に関する明細書
  3. 支出した金額を証する書類(領収書など)
  4. 給与の支払者の証明書
  5. 搭乗・乗車・乗船に関する証明書(航空運送事業者、鉄道事業者、船舶運行事業者、自動車運送事業者から証明を受けようとする場合に使用する証明書) など

4.と5.の証明書については国税庁のHPに様式が掲載されていますので、これを利用すると良いでしょう。

4.については、上の様式集から「特定支出に関する証明の依頼書」を会社へ提出し、「給与等の支払者の証明書」の交付を受け、領収書等とともに確定申告の時まで保存しておく必要があります。

5.は、「帰宅旅費」について特定支出控除を受けようとする場合に特別に必要になるものです。
搭乗券、乗車券、乗船券等とともに、「搭乗・乗車・乗船に関する証明の依頼書」を搭乗する際の空港の各会社のカウンター、乗車した列車の車掌さん、降車駅の精算所などに提出して、「搭乗・乗車・乗船に関する証明書」の交付を受け、それを保存しておく必要があります。
ただし、鉄道、船舶、自動車を利用した場合で、一の交通機関の利用に係る運賃及び料金の額の合計額が片道1万5千円未満のときは、その証明を受ける必要はないとされています。

 

まとめ

さて、サラリーマンの方のスーツ購入費用で節税できるかもしれない特定支出控除について説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?

控除額が少なくてがっかりされた方もいるかもしれませんが、せっかく認められた制度ですから利用しない手はありません。

会社からの証明を受けなければならないなど、ややハードルの高い制度ではありますが是非チャレンジしてみてもらいたいと思います!

 

ビズバ!を運営する会計事務所シンシアでは一緒に働く仲間を募集しています!

以下のような職種で、メンバーをお迎えしたいと考えています(募集職種は時期により異なります)。


 


『幹部候補生』
経験をお持ちの方には、幹部候補生として活躍を期待しています。
「より専門性の高い業務に挑戦したい」「自らもプレイヤーとして活躍しつつ、マネジメントも将来的に行いたい」
幹部候補生に応募の方には部門長となって頂くことが可能です!


『税務会計スタッフ』
必ずしも、会計事務所での長期の実務経験が必要ではありません。社会人としての当たり前のマナーをお持ちの方、歓迎です。
組織をより強固にするためにも、人財採用と教育は不可欠。「お客様の笑顔を見たい」と思える人財を募集・育成します。


『会計補助スタッフ』
簿記の知識があり会計ソフトへの入力の経験がある方で扶養の範囲内で働きたい方、大歓迎です。
育児と仕事の両立を積極的に応援しておりますので、働く時間も御相談の上一緒に決定していきましょう。


ご応募・お問い合わせはこちら

SNSでもご購読できます。

ビズバ!ではお伝えしきれない、よりタイムリーな補助金・助成金・税制などのお得な情報や、資金調達に関する裏話などを、メルマガで配信しています。 メルマガ受信ご希望の方は、メールアドレスを入力してください!

コメントを残す

*